フィリピーナと共に
ブログ構成がわかる目次はここから入れます
2019年03月24日

極秘会談 (フィクション)

 北京のとある密室で、極秘の会談が開催されていた。
 ある国の首脳二人が高級ホテルの一室で、リビングテーブルを挟み、ソファーに背中を預けて向き合っている。
 テーブルにはそれぞれの前にコーヒーが置かれていた。人払いされ、広いリビングには二人きりだが、二つのベッドルームにはそれぞれのボディガードと官邸スタッフが待機している。ホテル内外の各所にも、私服のSPが立ち周囲に目を光らせていた。
「僕はね、習ちゃんをすご腕の政治家だと認めている。ただね、ちょっと強引過ぎるところがあるんじゃないかと思うんだ」
 習ちゃんと呼ばれた男は、強引なのはお互い様ではないかと思いながら、四角い顔に笑みをたたえた。彼は笑うと、とても温厚そうに見える。
「いやいやトラちゃん、少しくらい強引じゃなきゃ、やっていけないよ。国民も党の幹部も軍もみんな燻った不満を抱えている。そこらじゅうに煙がのろしのように上がっているんだ。軍のクーデターだって心配しなきゃならない。トラちゃんだってそうじゃないか。そこでみんなにいい顔してたら、真っ先に国が崩壊しちゃう。それにいい顔したって誰の不満も消えやしない。人間の欲望にはキリがないんだ」
 トラちゃんと呼ばれた人物は、元々赤らんで見える顔をますます赤くして笑った。
「そのことは理解する。僕だってアンチ大統領派がいつでも僕の寝首を狙っている。みんな虎視眈々と、その機会を伺っている。少しでも気を抜いたら僕は直ぐに死んじゃうよ。だから国の崩壊というより、習ちゃん、あんたはあんたが死んじゃうことが心配なんじゃないのか?」
  二人で同時に笑った。少し乾いた、作り物の気配が漂う笑いだった。
「トラちゃん、気を抜いたら僕も死ぬけど国も死ぬ。それが現実なんだ。貴方だから本音を言うけど、この国はね、ほとんどの資源を祖先に食い潰されて、今はもう何も残っていない。それに科学技術の蓄積も乏しい。そんな状況で国を発展させるために、資源は強奪してでも確保するしかないし、技術も同様だ。そうするしかこの国の道はないんだよ。そこで人のものを盗むなというのは、我が国に死ねと言うのと同じだ」
 トラちゃんは少し顎を引いて、上目遣いで習ちゃんを見た。
 会談の本題は、世界が注目する貿易戦争の件だけれど、その戦争の裏には、もうこれ以上、人のものを盗むなという真のメッセージが隠されている。
 ここで本音を言われると、トラちゃんは少し苦しい。彼は喧嘩に持っていき、何らかの勢いでこの難局を乗り切りたいのだ。トラちゃんの怒りに、習ちゃんが簡単にひれ伏すと思っていたが、習ちゃんは思った以上にしぶとい。ことごとく報復措置を仕掛けてくる。
「そんな本音を漏らすなんて、習ちゃんらしくないじゃないか」
 習ちゃんは、再び乾いた笑い声を出す。
「いやいや、トラちゃん、これは真面目に死活問題なんだよ。だから今回、こちらは一歩も引けない。譲歩したくてもできないんだ」
「だからといって、人のものを盗んでいいという理屈にはならないんじゃないか?」
「トラちゃんの国だって、元々は先住民を脇に追いやって築いたものじゃないか。それにたくさんのユダヤ人を雇って科学技術を発展させた。金融だって優秀なユダヤ人が助けてくれた。そのおかげでさ、トラちゃんとこはどんなに台所事情が苦しくても、最後はお札を印刷すれば、それを世界中が引き受けてくれるからどうにかなるし、実際どうにかなっている。しかしね、この国はそうはいかない。こちらにそういったディスアドバンテージがあることを忘れてもらったら困る」
 習ちゃんの顔にはまだ笑顔が残っているが、その目には百戦錬磨のしたたかさが秘められている。ツボを押さえて威嚇する、細く力強い眼光がトラちゃんを捉える。
 そうなると、少し頭の弱いトラちゃんは焦ってしまう。彼はこんなふうに論理的で理知的な協議が苦手で嫌いなのだ。彼が得意とするのは激情型協議だった。テーブルをバーンと叩き、怒りに任せて自分の我儘を押し付けるやり方だ。そうなってしまえば、理屈も正義も何も要らない。あるのは欲求のみで、それを飲まなければどうなっても知らんぞという恫喝である。そもそも彼は、恫喝したいのだ。その恫喝に相手がひれ伏すのを見て、優越感に浸って幸せな気分を味わいたい。しかし最近はマスコミがうるさい。できればスマートに事を運び、有権者や世界の自分に対する評価を少しでも良くしたい。
 トラちゃんにはそんな思惑があるから、この交渉は我慢が大切だと自分に言い聞かせている。
「習ちゃん、我が国はね、人の助けはもらったけれど強奪はしていない。そんなことをすれば世界から袋叩きだ」
「それは表立ってはしない、ということじゃないの。湾岸戦争は何だったの? 石油利権の確保が目的の一つに見えたど。最近はなんだっけなあ……、そうそう、車のエアバッグに難癖付けて日本の会社をつぶしたし、ワーゲンにもイチャモン付けて出る杭を打ったよね。目立たない強奪はしっかりしているし、奢りたかい押し付けを散々しているじゃないの、トラちゃん」
 痛いところを突かれて、トラちゃんは辟易とする。彼は頭の中で、我慢の文字を念仏のように唱えた。
「習ちゃん、昔のことを蒸し返されも困るよ。それを言うならチベット侵攻、ウイグル人強制収容、南沙諸島領有問題みたいに、こっちだって言いた事は山ほどあるのに、こっちはできるだけ痛いところに触れないようにしてるんだから、そこんところは分かって欲しいね」
 習ちゃんは、トラちゃんがタジタジになるのを見てとり、少々図に乗った。
「そのところで言えば、あなたに何の権限があってそんなことに口を挟めるの? それらは最初から、お門違いじゃないの? トラちゃん、それは内政干渉だ」
 ここでトラちゃんは、突然念仏を忘れた。彼の顔がみるみる赤らむ。
「習ちゃん、いくら習ちゃんでも、言っていいことと悪いことがある。我が国は世界トップなんだ。世界の平和に貢献する義務を負っている。そのトップのトップがこうして話をしているのに、あんたには僕に何のリスペクトもないのか」
 トラちゃんは、ついつい本音を吐き出す。我(われ)はキングオブキングなんだという本音だ。
 荒らげたトラちゃんの声を聞き付け、双方の国のSPが同時にベッドルームからリビングに飛び出した。何れも右手がスーツの中に差し込まれ、直ぐに拳銃を取り出せる格好だ。
 流石にトラちゃんもそれを見て慌てる。彼はまあまあと、SPをなだめる仕草をし、習ちゃんも自国のSPに、問題ないから引っ込めと促す。
「すまん、ついつい興奮した」トラちゃんが謝る。
「相変わらず瞬間湯沸かし器なんだから」と習ちゃんが言った。
 二人が同時に笑う。少し笑いが引きつっていた。笑いが止まると、静寂が二人を包む。トラちゃんが咳払いし、習ちゃんはコーヒーを口に運んだ。
 沖縄米軍基地、台湾、尖閣、南沙領有問題。これらには、あまり報道されない共通問題が隠されている。それは資源だ。日本の貨物船も、この領域を一日三百も通過する。それは中国のタンカーも同じだ。もしここを封鎖されてしまえば、大動脈を遮断されたも同然で、国はすぐ様死に至る。だから習ちゃんは日米を分断し沖縄から米軍を撤退させたいし、台湾や南沙諸島を配下に収め、そこでの米軍の活動を封じ込めたいのだ。ロシアが北方領土の返還に決して応じないのは、そこに米軍が駐留されたら困るからだ。日本政府はそのことに気付いていて、領土返還が実行されても米軍の駐留はないと約束しているけれど、ロシアはそんな約束を信じない。政権が変われば約束がどうなるか分からないし、そもそもアメリカがそこに基地を置くと決めれば、日本政府の意向に関わらず、おそらく米軍基地ができるからだ。
 南沙諸島に関して、ドテちゃんは仲裁裁判所に異議申立てをした。判決はドテちゃんの大勝利で、習ちゃんの主張を一切認めないというものだったが、習ちゃんは図々しくも、この判決に従わないと高らかに宣言した。それに合わせるように、トラちゃんの陣営が、我が国はドテちゃんの国を守ると宣言した。
 タンカーの通るこれらの海域は、習ちゃんにとっては最大の関心事で、だから彼らは台湾にこだわり続ける。
 習ちゃんは、陸地に資源の運搬ルートを確保し安心したいから、別で一帯一路構想をぶち上げ、着実に実績を上げ始めている。苦しい相手国を借金漬けにし、返金困難になってから、例えば港の使用権などを半恒久的に取りつけるやり方だ。まるで女をシャブ漬けにし、なんでも言うことをきくようにする暴力行為と似ている。
 P国のドテちゃんも、このトラップに足を踏み入れ始めている。最近、ドテちゃんの国には、習ちゃんの国の単純労働者が大量に流れ込んでいるのだ。十六年から十八年の三年間で、二十万人もの習ちゃんの国の作業者がドテちゃんのお膝元に流入している。これは現在進行中の、習ちゃんの国から一千万ドルの資金援助を受ける計画に関連し、入国条件で優遇されているのではないだろうか。何となく密約じみたものを感じる。
 そんな習ちゃんに対し、トラちゃんは今度、兵糧攻めに出た。それが今回の、貿易戦争の背景だ。
 習ちゃんは、表では、この売られた喧嘩はきっちり買ってでると表明しているが、実はとても痛いはずだ。だから彼は、強気な振りをしながら微妙にトラちゃんへ気を使っている。これまで大々的にぶち上げていた半導体産業に関する構想も、表立って口にしなくなった。
 習ちゃんの国で、半導体の設計と製造が派手にできるようになったらどうなるか。今は設計はできるけれど、製造は機械を入手できずに中々前に進まない状況なのだ。
 もし習ちゃんが半導体業界のイニシアチブを手中に収めたら、世界中のメーカーにとって大脅威となる。競合の半導体メーカーに限らず、半導体を使う民生や自動車産業にとっても、先行きの読めない事態になり得る。特許やライセンスなどに全く無頓着な国だ。世界中の先進製品で使用されるアームアーキテクチャが、世界に安く出回る可能性も高い。
 現在、サムソンが世界一の半導体メーカーになったけれど、その背景には日本の技術供与が大きく絡んでいる。離れを貸して母屋を乗っ取られた状況になったのだ。これが、もし習ちゃんの国で再現されたらどうなるか。国の莫大な軍資金をバックに攻勢をかけられたら、普通の民間企業は立ち向かえない。バタバタと有名どころが消えていくはずだ。
 習ちゃんの戦略も手腕も大したものだと思うけれど、着実に各方面に触手を広げる彼は、トラちゃんの国にとって脅威でしかない。そして、ここでもし晋ちゃんが習ちゃんに取り込まれてしまえば、習ちゃんの夢物語のような構想は途端に現実味を帯びる。考えただけでもおぞましい。
「習ちゃん、あんたのやり方の問題はね、普通の自由競争ではないところなんだよ。国の資金を潤沢につぎ込む会社に、普通の資本主義の会社がかなうわけがない。体力勝負になったらもうお手上げだ」
「しかしね、地道に勝負したんじゃ追いつけないし追い越せない」
「いや、最近のIT業界の中は浮き沈みが激しいし、大きくなる会社の成長速度は尋常ではないくらい速い。要はアイディア次第だ。しかしあんたのところは、その肝心なアイディアを盗んで平気で使うところにある。しかも国の膨大な資金を注ぎ込んでだ。そうであるなら、こちらとしても対抗するしかないじゃないか」
「対抗すればいい。受けて立つ。我が国は伝統的に、長期戦に強いんだ」
 それは強がりであることを、トラちゃんは知っている。しかし強がりとはいえ、キングオブキングにそんなことを言う習ちゃんに、トラちゃんは次第にむかつきを覚え始めた。
「確かにあんたのとこは、長期戦に強いだろう。しかしね、本当にそうなら、こちらも別の手を考えなきゃならん」
「別の手? はて、そんな奥の手がまだあんたのとこにあるとは思えないんだが。見え透いたはったりはあんたの株を下げるだけだよ」
 ここでトラちゃんに、我慢の限界がやってきた。俺様に喧嘩を売るなど、千年早いということだろう。トラちゃんはベッドルームに待機する部下を呼び付け、耳打ちした。
 言いつけられた部下は即座に顔色を変え、「そ、それは……」と言葉を失う。しかしトラちゃんは 「構わん、早く持ってこい」と、怒声を上げた。
 一分後、部下が習ちゃんとトラちゃんの前に運んだものは、一つのアタッシュケースだった。
 それを見た習ちゃんも、途端に顔色を変えた。
「ま、まさか」
 習ちゃんも、慌てて部下を呼び付け耳打ちする。やはりその部下も顔色を変えたけれど、習ちゃんがトラちゃんの目の前にあるアタッシュケースに目配せすると、部下は納得したように別室へ引っ込み、そして同じようなアタッシュケースを習ちゃんの前に運んだ。
「トラちゃん、あなたは奥の手と言ってそれを用意したが、そういうことならこちらも同じような準備がある」
「そんなことは分かってるよ。問題は、これのボタンを押す勇気があるかないかなんだな」
 その言葉が習ちゃんを刺激した。
「こちらにその勇気がないとでも?」
「ないね。武力衝突になればどうなるか、あんたは最初からその結果を熟知しているはずだ」
 トラちゃんが、自信満々に言った。
「いくらトラちゃんでも、その言葉は酷い侮辱だ。そういうなら、試してみよう」
 習ちゃんがトランクケースを静かに開ける。そこには、指紋照合装置や計器類が並び、透明なプラスティックカバーでガードされた赤いボタンがあった。習ちゃんに合わせ、トラちゃんも自分のケースを開けた。習ちゃんのと同じような計器やスイッチが並んでいる。
 二人で顔を見合わせた。意地と意地のぶつかり合い。
 習ちゃんが先に口を開く。
「僕に度胸があるかないか、よく見届けて欲しい」
 習ちゃんがケースの中にある装置を操作し始めると、ピーとかプーという音に、何やら習ちゃんの国の言葉でアナウンスが流れる。習ちゃんがトラちゃんを見て、ニヤリとした。そしてボタンを押す動作に続いて、カウントダウンらしいアナウンスが聞こえる。
 習ちゃんが顔を上げ、トラちゃんに不敵な笑みを投げた。
 トラちゃんの顔が引きつった。彼も急いで装置を操る。どうやら慣れていないようで、まごついているようだ。しかし額に汗を浮かべた顔が上がり、トラちゃんも不敵な笑みを浮かべた。
 今度は習ちゃんが顔をひきつらせた。
「トラちゃん、まさか、もう発射したんじゃないよね」
「度胸の問題と言ったじゃないか。そっちが発射したなら、こっちだって発射するしかないさ」
 今度こそ、習ちゃんは慌てた。
「ばか、こっちはまだ、発射準備段階だ。最終指示は最終意思確認のあとにするもんだろう、普通は。それで、本当に発射したの?」
「え? もうしちゃったけど」
 習ちゃんは呆気に取られて、一瞬言葉を失ったけれど、数秒で我に返った。
「発射したミサイルは何で、標的はどこ?」
「標的は北京に決まってるじゃないか。ミサイルは最新式の核弾頭を積んでる」
「あんたも北京にいるのに、標的が北京?」
 トラちゃんが目を丸くした。
「あっ、忘れてた」
「ばか、早く取り消せ」
「キングオブキングに向かって、ばかばか言うんじゃない」
「え? ああ、それは謝る。謝るから、早くそのミサイルを何とかしてくれ。着弾したら、あんたまで一瞬で蒸発するんだぞ」
 蒸発という言葉に、流石にトラちゃんも慌てたが、ここで大きな問題が起きた。
「習ちゃん、発射方法は分かるけど、取り消し方法は知らないんだ」
 習ちゃんは口を開けて、動作が止まった。が、すぐ様我に返る。
「だったら早く知ってる人間に聞いてくれ」
 トラちゃんは、官邸スタッフを呼び付け、すぐにホットラインで本国へ電話するように言った。
「習ちゃん、あんたのとこに、ミサイル迎撃用のパトリオットはないのか?」
「そんなものがあるわけないじゃないか。あんたが売ってくれないだろう」
「そうだった」
「しかしこっちにも、優秀なミサイル迎撃システム、迎撃がある」
「そままじゃないか」
「名前なんてどうでもいい。とにかく今、迎撃発動の指示を出した。太平洋上で爆破する必要がある。もうあまり時間がない」
 そこへトラちゃんのスタッフが、電話が繋がったと言って少し大きめな携帯端末を持ってきた。
 トラちゃんは少し話して、習ちゃんに言った。
「どうやら一旦発射されたら、我が国からの追撃は不可能らしい」
 習ちゃんは仰天した。自分たちの迎撃システムはあるけれど、これまで試したことがない。命中率は百パーセントではない、ということだけを習ちゃんは聞いている。
「そしたら、こっちの迎撃システムで何とかするしかないってことか?」
「いや、自爆システムがあるらしい」
「ばか、早くそれを言えよ。だったらすぐに自爆させてくれ」
 ちょっと待ってと言い、トラちゃんは電話の相手と話しながら、ミサイル発射装置を操作する。それをみんなで固唾を飲んで見守った。普段からどうにも頼りないリーダーだけれど、機械操作となれば尚更だった。
「大丈夫か? 何とかなりそうなのか?」
「たぶん……」トラちゃんは自信なさげだ。
 トラちゃんが自爆用暗号を打ち込み、電話の相手から指示される通り装置を操る。そしてピーという少し長い音が出て、トラちゃんは大きく息を吐いた。
「終わった。ミサイルは自爆したはずだ。レーダーで確かめてくれ」
 双方の官邸スタッフが、お互い自国の軍に連絡を入れ、ミサイル消滅の確認を指示する。そして少し経ってから、ミサイル自爆確認の二つの声が、部屋の中に響き渡った。
 この事件の後、習ちゃんは心からトラちゃんを恐れるようになった。こんな人間が強大な権力を手にしているのだ。いつ世界戦争が始まってもおかしくない。理屈もはったりも通用しない。国民の被る迷惑も斟酌しない。
 これはもう、手の付けようがない。流石の習ちゃんも、内心困り果てた。
 当面、意地の張り合いで進むしかない。しかし習ちゃんは、トラちゃんのせいで政治生命を絶たれるかもしれない恐怖を感じ、不穏な心境を沈めるように天を仰いだけれど、不安は増長するばかりだった。
posted at 18:18
Comment(0)
カテゴリー:フィリピン生活
エントリー:極秘会談 (フィクション)
2019年03月17日

革命を起こせないなら、コーヒーショップでも

 ランカウイの旅行を記録しようと思い立ち、先日久しぶりに投稿したら、これが三年半ぶりであったことに気付いた。それほど長い期間、僕は自分のブログを放置していたようだ。
 しかし過去の記事は腐ることもなく、インターネット世界の中で存在し続けていた。しかも毎日誰かが見ている。何とも不思議なことではないだろうか。新聞紙のように黄ばむことも朽ちることもなく、まるで真新しい記事のように、書いた本人でさえ分からない場所のサーバーに記録され公開され続けているのだ。これが情報革命の一つなのだろう。
  ……などと思いながら、やっぱり久しぶりに曰本ブログ村を覗いてみると、昔からの上位常連者は健在だし、自分のブログもトップページにないものの、少しページをめくればそこにあり、これには流石に驚いた。
 フィリピンと日本の交流も、相変わらず盛んで何よりだ。
 先日マレーシアで、ある年配の日本人女性と話す機会があり、そこで興味深い話しを聞くことができた。
 その内容は、僕がフィリピンを知るずっと前のことだった。
 かつてフィリピンからタレントとして訪れていたフィリピン人は、フィリピーナではなくフィリピーノで、日本での活動内容はホテル、レストラン、バーでのバンド活動だったそうだ。
 それに多くの日本人女性が嵌り、恋に落ちてたくさんのお金をフィリピーノに貢いだそうだ。結婚の約束をしフィリピンに行ってみると、そこには彼氏の妹がいて、しばらくして、それが本当は奥さんだったことに気付いた、なんて話しはざらにあったようだ。
 それでも後に引けない日本人女性たちは、そのまま無理やり彼氏に連れ添ったり、別れてフィリピンで仕事を始めたり、または別の男を見つけたりと色々だったそうだ。もちろん日本へ逃げ帰った女性もいる。
 年代でいえば、おそらく自分と変わりない女性たちではないかと想像するけれど、かつてはそんな出来事がそれほど珍しいことでもなかったようで、時代は形を変えて繰り返すものだとつくづく思う。
 たまにフィリピンに根付いている年配の日本人女性を見かけるけれど、これからは、もしかしたら昔はそんな情熱的な女性だったのかもしれないと、情熱の欠片も残っていない乾いた厚塗りの顔を見ながら不思議に思うかもしれない。
 いや、決して馬鹿にしているわけではない。そんなことを言う自分も、海外の地で随分乾いたおじさんになっている。
 白髪が増えて、少し運動するとすぐに身体中が悲鳴をあげ、ある意味では持久力がアップし、文字とおり乾燥肌で、あちらこちらにたるみが現れている。
 色恋沙汰から遠ざかると、人間は心身共に潤いを失うものだ。
 それを仕事で補うこともある程度は可能かもしれないけれど、最近は体力と気力が追いつかない。それだけでなく、頭脳の回転も追いつかない。窮地に追い込まれた際、以前は上手く立ち回ったり切り返しできたことが、今では戸惑うことも多い。それを、身につけた図々しさで補っているときに、自分の限界を感じ始めている。
 そうならば、そんな劣化を覆い隠せる何かで一発当てたいなどと、遠くを見つめる目で妄想したりする。
 例えば携帯。アップルもサムソンも、その他多くの携帯会社が、消費者の購買意欲を刺激する新機能、性能が何かを見いだせず、新商品開発に苦戦している。特にアップルは5G開発で大きく出遅れ、窮地に立たされている。
 見開きで大画面を使える携帯は魅力だけれど、まだ価格が高すぎる。重量や大きさ、厚みも気になるところだ。
 さて、自分だったら今の携帯で、どんな機能が欲しいだろうか。
 自家発電する携帯なんてどうだろう。振動、光、体温を利用しての発電機能を内蔵し、一週間くらいは充電不要、なんていう携帯があったらどうだろうか。小型核融合装置内蔵で、一生充電不要というのもいいかもしれない。
 このアイディアを持ってアメリカに渡ろうかとも考えたけれど、気力が追いつかなかった。
 革命を起こすには、どうやら歳を取りすぎてしまったようだ。
 というわけで、今は料理の腕をあげるべく、家で頻繁に料理をしている。現実路線で、小さなコーヒーショップでもやろうかなどと考えているのだ。落ち着いたコーヒーショップで、少ないメニューながらも美味しい料理を出す、という店だ。
 売り上げ目標は一日五千ペソ。材料比率二十パーセント、その他経費が三十パーセントで、利益は五十パーセント。百ペソを使ってくれる客が五十人来ればよい。五十人を十時間でさばく。何とかなりそうではないか。
 まあ、実際は思った通りにいかないのが人生で、今は懸命にコーヒーショップ開店のイメージトレーニングをしながら、どうするかを思案中。
 小説が当たればいいなと、ブログベースの物語を完成させしばらく温めていたけれど、海外にいると出版社への送付も面倒で、これも昨日、本日と無料公開してしまった。
 かつて様々な人から問い合わせを頂いたアイリーンも、完成版がある場所に無料公開されている。

 日本人の長生きの秘訣は味噌汁だという説を読んだとき、そういえばしばらく味噌汁のない生活をしていることに気付いた。これは意外に早く死ぬかも、なんてことに思い至ると、老い先短い人生に、少々焦りを感じる今日この頃だ。

広告


この広告は60日以上更新がないブログに表示がされております。

以下のいずれかの方法で非表示にすることが可能です。

・記事の投稿、編集をおこなう
・マイブログの【設定】 > 【広告設定】 より、「60日間更新が無い場合」 の 「広告を表示しない」にチェックを入れて保存する。