フィリピーナと共に
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2009年04月11日

セブ13 フィリピンの生活

リンは僕がバーで接してきた女性とは、少し違っていた。
妙にシャイなところがあり、感情もあまり表に出さない。
他のフィリピーナのように、底抜けに陽気なわけでもない。
日本語は全くわからないが、少し日本人的な雰囲気を感じさせるところがあった。

ゴーゴーバーで出会ったリンであったが、彼女はその仕事を最初から嫌っていた。
生活の為に働いてはいたが、サラリーが安くてもビキニ姿でステージに上がることだけは決してしなかった。
ゴーゴーバーで働いていたにも関わらず、時には巧みな会話で、そして時には強硬な態度で、連れ出しを断ってきた。
だからこそ、彼女をくどく男が多かったのかもしれない。
そして結局は、数週間で店を辞めた。

セブでは、バーで働き体を売ってお金を稼ぐ女性のほとんどが、生活のために仕方ないと言う。
好きでそんなことをしているわけではないと、口をそろえて言う。
大体が、食べることができない家族や幼い子供を抱えている。
そんな話に同情し、お金だけを渡す会社の同僚も少なくなかった。
だからリンだけが特別なわけではなかった。

しかしすべて真実とは限らない。
お金だけが目当ての、心無い女性もいることはいる。
だから彼女たちの話を、全てを手放しで信じるわけにはいかなかった。

リンに、彼女の生活の事を尋ねてみた。
その時に初めて、彼女が7人の子供の面倒をみていること、そして現在は収入が無いことをはっきりと知った。
無収入であることは察しをつけていたが、なんとか食べていく見込みはあるかもしれないと思っていた。
しかし彼女に、この先の確たる見通しはなかった。

7人の子供は、リンの兄の子供だった。
義理の姉、つまり子供たちの母親は、その兄が働かず毎日遊んでいることに嫌気がさし、家を出て行ってしまった。
そしてリンが子供たちを面倒をみていたのだった。
嫁が家を出ても、リンの兄は相変わらず遊び呆けているとのことだった。
そしてリンは、子どもたちに罪はないからと、面倒をみていたのだった。

彼女の住んでいるアパートに連れて行ってもらった。
治安が悪いため、夜の日本人の一人歩きは危ない場所だと言われた。
隣には小さな飲み屋があり、夜はうるさくて眠れないとリンが話していた。
実際、昼だというのに、既に酔っ払っているみすぼらしい男たちが、数人たむろしていた。

飲み屋といっても、掘っ立て小屋のような個人の家の軒下に、テーブルを1つ2つ置いて営業しているようなところである。
彼女のアパートも、表には鉄格子の扉が付いているが、似たりよったりの古くて狭い、薄暗い部屋であった。

部屋の中には、5人の女の子がいた。
一番小さな子は5歳、大きな子は12歳だった。
僕が部屋の中に入ると、少しとまどいながらも、きちんと挨拶のできる子どもたちだった。
その下に、3歳の女の子と1歳の男の子がいるそうだが、その子たちは、リンの母親が田舎に連れかえっているとのことだった。

5人の女の子達は、それぞれ役割分担があり、夕食の支度をてきぱきとこなした。
まだ小さな子でも、しっかりとお手伝いをしている。
リンが台所に立って、子供たちが用意する食材を調理していく。
買い物に行く係、部屋の片づけ係、テーブルを整える係、食器を並べる係、ごはんをよそう係と、何も指示しなくても細かく動き回る子供たちの様子をみて、普段の生活をうかがうことができた。
古くてきたない家でも、部屋の中はきちんと整理整頓され、居心地は悪くなかった。
子どもたちの教育が、行きとどいていることがわかった。

7人で食卓を囲んだ。
子どもたちとの会話は、全く弾まなかった。
リンに言わせると、僕の英語がわからないということで、築きあげつつあった自信をいっぺんに失ってしまった。
夕食はリーチョンバブイという豚肉の料理にライスだった。
質素な夕食ではあったが、ご飯を食べられるだけありがたいという話だった。
ご馳走様というと、いやいやそれは、あなたがくれたお金で買った米とおかずだから、礼はいらないと、リンは冗談ぽく言って笑った。

ほんの少しであったが、フィリピンの生の生活を直に見せてもらい、その貧しさに正直驚いた。
しかし、彼女や子供たちを見ていると、彼女たちは、日本が無くしてしまった大切なものを、いまだにたくさん持っていると感じた。
生活が豊かになるにつれ、人は、他人や家族を思いやる気持ちや自分の心を見失う傾向にある。
それは日本だけではなく、どの先進国も同様であるようだ。

フィリピン人は、人によって様々ではあるが、全体的に人間的な温かみを感じさせてくれる。
その後僕は、様々なところで、それをますます実感していく出来事に出会うのである。

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カテゴリー:セブ編
エントリー:セブ13 フィリピンの生活
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