フィリピーナと共に
ブログ構成がわかる目次はここから入れます

マレーシア奮闘記:カテゴリの記事一覧です。

2013年02月03日

マレーシア奮闘記2

 僕は突然、製造現場の会議に呼び出された。僕を呼び出したのは、生産技術の日本人マネージャーであるゴジラさんと日本人工場長のルパンさんだった。胴長短足でビヤダルのようなおっさん体型に目のつり上がった爬虫類を思わせる顔をしているゴジラさんは、いつも何かに吠えまくっている。その様子がまるで火を吐いているようだからゴジラさんというわけだ。一転工場長は細身ですらっとしていて常に冷静沈着な人だ。頭の切れるルパンさんはいつも冷静な口調で厳しいことを言うが、それがほとんど的を得ている。アニメのルパンと性格はまるで違うが、薄くなった髪で強調された縦長の顔と細い目と、物事に動じないひょうひょうとしているところがルパンだった。会議室には製造、生産技術、品質保証、資材の現地スタッフの面々が揃っていた。
「マークさん、ちょっとこのデータを見て下さいよ。これ、どう思われます?」
 さっそくゴジラさんが関西弁で火を吹いた。僕は一瞬その火をかわすように身体をのけぞらしてから、目の前に出されたデータを覗きこんだ。それは工程不良と不良の内訳を示すものだった。通常の感覚で言わせてもらえば、そのデータは何とも哀れで悲しいものだった。
「いやあ、これは酷い。こうなると現場は不良の山でしょう」
「もちろんそうですよ。今すぐ見せましょうか?」
「それは後でいいです。で? この不良解析はどうなっているんですか?」
「生産技術でやっているんやけどどうにも分からんのですよ。突然不良が増え始めたんです。現場はもう大変ですわ。数をキープするのに製造は休日返上と毎日遅くまで残業しとってんけど、追いつきまへんのや。これまでもそうなんやけど、どうにもこの製品、歩留まりが暴れるんですわ。自分たちは根本的な設計がだめなんちゃうかと思っているんです」
「設計は誰の担当ですか?」
「問題のアーノルドですわ」
 アーノルドさんが大嫌いなゴジラさんは、その名前の部分を強調するように言った。名前を言う瞬間、もともとつり上がった目が血走ったようにさえ感じられた。そこで僕が「やっぱり」とか「またか」などと言えば、「そうなんですわ」と始まってゴジラさんの吐く火がますます勢いを増してしまうことくらい、もう僕にも分かっている。

「何か分かっている変化点はありますか?」僕はゴジラさんがもっと火を吐きだしたくうずうずしているのを牽制するよう、製造のメンバーに英語で訊いた。
 その問いに、外装のある部品に金型変更が入り、それが変化点だという回答が品証のメンバーから返ってきた。
「分かりました。こちらで不良解析をしましょう。ところで品証はその部品のFA(金型確認)データを揃えて後で僕に下さい。それと部品の受け入れ検査はどうですか?」
「受け入れ検査は問題ありません。だから困っているんです」坊主頭の中国系受け入れ検査責任者が答えた。
「受け入れ検査で問題が発見されない? ふーん、それは確かに分かりにくい」
「だから自分たちは、もともとの設計に問題があるのではと疑っているんです」
「つまり図面がおかしいと」
 品証のメンバーが、黙ってコクリと頷いた。
「アーノルドさんにはこの現状を知らせていますか?」
「もちろん知らせてますよ。やつは何度か現場を見にきたとちゃうんかなあ。この件でサプライヤーにも行っているはずやけど、こっちにはあいつが何やっとるかわからへんし、物もちっとも良くならへんのですわ」
 製品が量産されるまでには、数々の信頼性試験を通し合否が判定される。当然量産が承認されるためには、それらの試験を全て合格で通過させなければならない。つまり市場に出回る商品というのは、そのような難関をくぐり抜けた優等生なのだ。それを身近に知っている彼らも、設計がおかしいと言う割に疑心暗鬼だ。状況証拠は揃いつつあるが、送検するにはもう一歩決定的な証拠が欲しいと顔を突き合わせて悔しがる刑事たちのようだった。
「品証は今すぐにラインを止めたいと言うんだけれど、生産が追いつかないから止められない。不良原因が分かって先の見通しがつくならいいが、いつ何がどうなるか分からん今の段階では、とてもじゃないがそれは無理だよ」
 年季の入った工場長のルパンさんが、苦虫を噛み潰したような顔でぼそりと言った。
 しかし目の前に出されたデータには、ぱっと見ただけで傾向不良が見受けられる。つまり製造で合格と判定され出荷した製品の中にも、不良要因がくすぶっている可能性が高いということだ。それが製造ラインの中である規格を超えたか超えないかというだけの話で、何かの条件が変化すれば不良要因が市場でひょっこり顔を出すことが十分あり得る危険な事態である。
「とにかく不良品を適当に見繕ってこちらに下さい。まずは正確な原因を突き止めないと何も判断できない」

 こうして僕は数日間、自分の机の近くで製品を分解し、不良の詳細を調べることになった。その不良解析に、メカ設計のチーフであるサンボさんが付き合ってくれることになった。
 一つのテーブルを用意し、その上で箱から一つ一つ取りだした不良品を分解しながら、丁寧にじっくりと様子を見るところから始めた。
 しかしサンボさん、製品を見るよりもその製品の設計図面を眺めていることの方が多い。何か思い当たる節でもあるのだろうか。いずれにしても僕は自分の分からないことがあった時に、相談できる人が傍にいるのは心強い。そしてこのような時は、自分の神経をコンセントレートさせることが大事だ。僕は自分のペースを守って不良品と対峙した。
 まず僕は不良品と良品の部品の動きを、片っ端から手の感触で確かめてみた。すると何となくというレベルでいくつかひっかかりのある物が出てきた。職人の勘に引っかかるという程度の微小な違いである。その部品を顕微鏡を使い観察すると、その表面の一部に僅かにおかしな突起を見つけた。塗装部品だったが、表面や角にインクの溜りがあるのだ。肉眼では分かりにくいほどの僅かなものだった。その部品を良品から取り出したものと交換してみると、見事に不良が解消される。これらは不良品を見始めてから一時間ほどで分かった。
「サンボさん、この部品の塗装がおかしいと思うんだけれどどう思う?」
 サンボさんが小さな目を絞って、その部品の表面を凝視した。絞った目の周りにできた皺が、痙攣しているようにぴくぴく動いている。そして僕の撮った顕微鏡写真を見てから言った。
「サプライヤーイシューね(業者の問題)」
 サンボさんはすぐにペイント不良だと言い切った。その顔には、既に一件落着という安堵の笑顔が浮かんでいる。そしてすぐに、目の前のパソコンで自分の取り組んでいる仕事の図面を広げ始めた。

 僕はこの時、なるほどこの人たちはこうやって問題を見極め、そして仕事を終了させることが分かった。簡単に見極めて、しかもその結果をデータとして残そうとしないのである。僕が何のために顕微鏡写真を丁寧に撮っているのか、サンボさんはまるで理解していない。
 週に一度日本との定例電話会議がある。その中で僕が携わる前の製品上の問題点などが日本側からフォローされる。日本から「例のソフトの問題はどうなってますか?」と訊かれ、現地の設計者が「解決しました」とか「改善しました」という返答をする。それでその問題についての確認は終わるのだが、そこに一切データのやり取りがないことを僕は不思議に思っていた。裁判長が「あなたは旦那を殺しましたか?」と容疑者に訊いて、容疑者が「殺していません」と言ったら「うむ」と頷いて無罪判決を出し裁判が終了するようなものだ。僕は彼らの解決や改善が、何をどうして行われたのかその詳細が気になって仕方なかった。そのやり取りにはまるで、靴の底を通して足裏を掻いているようなもどかしさがあった。

 僕は引き続き、動きのおかしい不良全てに塗装の原因があるかを調べてみた。するとその要因の不良は、不良品三十個中二つしか見つからなかった。
 僕は塗装の問題に関するレポートを作成し、すぐにそれを関係者に送付した。製造側からはすぐに、品証を通してサプライヤーに対策させると返信がきた。
 では残りの不良の原因は何か、それが問題だ。塗装の問題が片付いても、生産現場にはまだまだ不良が山のように積み上がることになる。サンボさんにそれを説明したが、彼は既にうわの空だった。「サプライヤーイシューね、オーケーオーケー」とまで言い、それで済まそうとしている。「僕は今、とても忙しいね。残念ながらサプライヤーイシューに付き合っている暇はないね」と言わんばかりである。

 僕に与えられたミッションの一つに、この時のサンボさんのような、設計者の意識を変えることも含まれている。サンボさんに能力があるかどうかという問題ではなく、これは意識の問題だ。サンボさんはもともと、自分たちに非があると分かれば真剣に取り組む真面目な人物だ。しかしもともとはそうでも、彼の身体の半分は確実に南国体質である。一つの問題をこねくり回すように吟味し、あらゆる可能性を把握しつぶそうとする思考は皆無だ。おそらくやればできるが、必要性を感じないからやろうとしない。もしくは極力最短距離で物事を片付けてしまいたいという、究極の効率絶対主義がちらほら見える。僕はそこに、ずいぶんとフィリピン人に共通したものを感じ取っていた。
 ここからは孤独な闘いだった。不良は回路基板をネジで締め付けると発生しやすいことが分かった。どうやらネジの締め付けトルクで不良の様子が変わるようだ。ネジを強く締めると、製造で不良とみなしていない箇所にまで不良現象が現れ始めた。しかし肝心の場所で何が起こっているのか基板が邪魔をして見えない。僕は基板と同じ厚みの透明アクリルボードを探し、基板と同じサイズにカットし、取りつけ箇所に少し大き目のネジ穴をあけてそれをメカに取りつけてみた。そしてネジの締めを強くしたり弱くしながら、アクリルボードを通し顕微鏡で問題箇所を観察してみた。するとネジ締めによって、ある部分がたわみながら動くことが分かった。次はなぜネジ締めで影響が出るのかを調査した。アクリルボードを外した状態でのネジ締めでは、何も起こらない。次に薄いラバーシートを透明アクリルボードの裏に入れ込み、アクリルボードと共にネジを締めることで、どこにどの順番で圧力がかかるのかを観察してみた。するとネジを締め付けることで、いくつかのポイントでラバーにプレッシャーマークが現れた。図面を見るとそこには圧力がかからないように設計されている。しかし実際は、本体ケースが押されているのだ。ここまでくれば、問題のたわみと圧力の関係は誰でも分かるほど簡単だった。
 僕はネジ締めで可動する部分の写真、ラバー上に現れたプレッシャーマークの写真、ネジ締めトルクとたわみ量の関係、そして怪しい箇所の精密測定依頼を含め、再びレポートを発行し関係者に送付した。
 この不具合は@@と%%の干渉によるものだ。その二つのクリアランスが非常に小さいところに@@のたわみが原因で更にマージンがなくなっている。つまりこの不良は工程で見逃すことが十分考えられ、使用環境によって良品として出荷された製品に同様の問題が発生する可能性のある危険なものだと添えた。



↓ランキング挑戦中
にほんブログ村 海外生活ブログ フィリピン情報へ
にほんブログ村
人気ブログランキングへ



posted at 02:00
Comment(0) | TrackBack(0)
カテゴリー:マレーシア奮闘記
エントリー:マレーシア奮闘記2
2013年02月02日

マレーシア奮闘記1

 僕は彼をサンボさんと名付けた。ちりちりの髪とメガネの奥のちんちくりんな小さな目は彼のひょうきんさを表していた。そして浅黒の顔に妙などす黒さを感じさせる厚めで湿り気のあるプルプルした唇が印象的な顔だった。彼と初めて会った時に、「サンボ!」という文字が脈略なく僕の頭の中に浮かんだ時から彼は僕の中でサンボさんになった。サンボさんが笑うともともと小さな目はごま粒のように小さくなり、特徴的な唇の間に現れる前歯のかけた様子が人目を引く。上背は男性にしては低めの小柄な細身。サンボさんはメカニカル設計のチーフで、その下にはサンボさんと対照的な190cm以上の上背とアメフト選手を思わせるようながっちりした骨格を持つ、若いエンジニアのアーノルドさんがいる。アーノルドという名は、角ばったごつごつした顔と体型がまるで鉄人アーノルドシュワルツネッガーを思い起こさせるところから、彼が僕の中でアーノルドになった。もちろん本当の名前は別にある。その二人の上司になるのが、丸い大きな顔にアーモンド形の目とセットになった長い女性的なまつげと、鼻の下のハの字の髭、無精髭のような顎髭を持つプリンスさんだ。プリンスさんの体型はサンボさんとアーノルドさんの中間だ。常に温厚で笑みを絶やさないこの人はさて何だろうと考え、時に男性的で時に女性的なパープルレインというヒット曲を生みだしたプリンスとイメージが一致した。
 プリンスさんの辞書には怒るという文字がないように思えるほど、彼は何があっても怒りの感情を外に出すことがない。その温厚な性格を象徴するように彼の話し方はいつもゆっくりで、その口から出る言葉は相手を気遣うよう、いつも丁寧に慎重に選択されている。素晴らしい人格者だが、周囲の人間はプリンスさんをリーダーとして優しすぎると言う。
 プリンスさんとサンボさんはマレー系で温厚な性格だが、中国系のアーノルドさんは我儘で切れやすく、常に我が道しか見えていない唯我独尊タイプだ。そんな性格を持つアーノルドさんを、直属の上司にあたるサンボさんや更に上のプリンスさんは持て余しているように見受けられる。
 僕は普段、主にプリンスさん、サンボさん、アーノルドさんと関わりながら仕事をしている。また、そろそろキックオフとなる次のプロジェクトは、僕とプリンスさんがプロジェクトマネージャーとしてタッグを組むことが決まっている。僕が主にメカ設計関係を中心に設計関係や社外調整・渉外を担当し、プリンスさんが資材、生産、品質保証、製造関係の社内調整をする。二人プロジェクトマネージャー体制だ。

 この会社に来た当初、僕にもアーノルドさんが手ごわかった。こちらから朝の挨拶をしてもまるで応答がない。相当強引に話しかけないと無視される(聞こえないふり)。アーノルドさんは会社の中でもひねくれ者として通っているが、人出不足のこの折そんな彼でさえ辞められたら困るらしく、周囲はまるで腫れものに触るように彼を扱い、彼が自由勝手な行動をとっても誰も文句を言えない。
 一度プリンスさん、アーノルドさんと三人で外注先にサンプル品の出来栄えを確認しにいった。僕が品物をチェックしながら一つの物にダメ出しをすると、アーノルドさんがそれは問題ないと言いだした。僕はある判定基準に従ってダメ出しをしているのでそれを彼に説明すると、アーノルドさんはプリンスさんに僕の話していることが本当かを確認した。そしてアーノルドさんは僕の話していることが正しいと分かると、顔を真っ赤にし突然机をバンっと叩きどこかへ行ってしまったのだ。
「なっ、何かあったの?」
「さあ」
 両手の掌を身体の両脇で上向きにし肩をすくめながらプリンスさんはとぼけたが、その顔には珍しく怒りと困惑の表情が浮かんでいた。少し冷却時間を置いて訊いてみると、アーノルドさんは僕が知っていたことを自分が知らなかったことに腹を立てたらしい。なぜそのような重要情報を担当の自分に連絡しないのか、ということらしいのだ。
「それはプリンスさんの手落ちだったね。担当者にはしっかり伝えるべきことだよ」
「お〜、ソーリーね。僕も最近忙し過ぎて、たくさんミスあるね」
「そうだね、プリンスさんは忙し過ぎる。しかもくだらない仕事で。僕がプリンスさんの手足になるから、遠慮せずに何でも言いつけてよ」
「お〜、サンキュウね、マークさん」
 プリンスさんもサンボさんも会話は英語だが、言葉の最後に「ね」を付ける。これが日本語の「ね」なのかマレー語の影響なのか僕には分からない。

 僕はまずこうして、温厚な現地マネージャーのプリンスさんと信頼関係を築いていった。狙い撃ちでそうしたわけでなく、性格的に話しやすいプリンスさんとの会話が一番和むことから、自然とそうなった。
 それでもアーノルドさんはなかなか僕に心を開いてくれない。彼は僕だけでなく、サンボさんやアーノルドさんにも心を開かず、自分に情報を貰えなかったことを烈火のごとく怒った彼自身も、普段から上司二人に報告すべきことをほとんど報告していない。それでもプリンスさんができるだけ感情を抑え込んでいるのは、彼を始めとした大多数の人が不協和音を嫌い、波風が起こらないよう和気あいあいやろうとしているからだ。
 それが経営者にすると世界のライバルを相手に闘う企業として物足りなさを感じさせるところのようだが、僕は楽しくやって儲かったらそれに越したことはないと思っている。
 押しの弱いプリンスさんでも後ろ盾になってくれると、僕はとても仕事がしやすい。僕のやりたいことをプリンスさんに説明し彼が理解してくれると、プリンスさんは社内の協力者を僕に手配してくれる。そしてプリンスさんが顧客から無理難題を突き付けられて困っている時には、僕に相談してくれる。
「マークさん、時間取れる?」
「あるよ」
「これ見てくれる?」
 プリンスさんが両手で持つノートパソコンの画面を僕の前に差し出した。そこには顧客からのメールがあった。それによると、既に量産間際の製品のある電子部品を変更してくれとある。LEDの色変更要求だった。僕が視線をパソコンの画面からプリンスさんに向けると、彼は口を結んだ困った表情で顔を左右に数回振った。
「これをすると、納期が間に合わないでしょう」
「そう、だから困っている」
「最初のLEDの色は、客の要求仕様通りでしょう?」
「もちろんそうね。それに客は最終サンプルも承認しているね」
「それじゃあ困らなくていいよ。こう返事をすればいい。部品変更要求に応じることはできる。ただし納期が二カ月遅れる。そして既に調達した不要になる在庫部品代を調べてそれを請求しなくてはならないことを書く。場合によっては一部の試験をやり直さなければならない。追加請求には部品の手配、製造を含めた社内調整、再試験のコストが上乗せになるが了解してくれと付け加える。基板の変更はできるだけしなくても済むように努力すると書いて、それでいいですか? よいならすぐに文章で返事をくれ、そしたらこちらはすぐに動けると言えばいいだけだよ。おそらく相手は変更依頼を取り下げる。ただし初回ロット分の新規部品をかき集めてどの程度納期短縮できるかどうか、資材に調べてもらった方がいい」
 プリンスさんの眉間に皺を寄せた困惑した表情が、いつもの笑顔に変わった。
「オーケー、サンキュウね、マークさん」
「何でも一人で悩むことはないよ。無理な要求はお互いのリスクを整理して、それを正直にぶつけてみればいい。それでこの製品の注文がなくなることはないから。他の製品にしても同じだよ。途中で止めて困るのは客の方だから。そもそも思いつきのようなこの要求の方がおかしい。この段階で大した理由もなく部品変更は変でしょう」

 お客は日系企業のインド人だ。そして僕がいる会社も日系企業だ。顧客は日本でも大手の会社で、お互い日本の母体でもビジネス上の付き合いがある。よって技術的な内容はそれぞれ日本の母体とその出先であるマレーシア、インドの会社の四つ巴で物事が進行する。更にインド側は現地の商社と僕のいる会社の営業所が入るので、一旦物事がねじれると話がややこしくなるのだ。
 インド人の要求はいつも唐突だった。彼らはどうやら何でもダメもとで要求をぶつけてくる傾向にある。しかしマレーシア側のスタッフはそれをいつも真に受けてしまうから、そのことで余計な神経をすり減らすことが多い。カスタマー要求に逆らってはならないという頭があるようだ。その姿勢は大切でも、要求の筋が通るか通らないか、最初の段階でそこを見極めないと大変なことになる。筋の通らない要求を安直に受け入れると、お互いに困る事態に陥る。最初の段階ですっきりさせておけばどうということはない。

 僕がこの会社から要求されている業務の一つは、このようなことを現地のスタッフに教えることだと理解している。これらは一朝一夕で伝えられるものではない。一緒に仕事をし問題を一緒に悩んで解決しながら、共に成功体験をすることで伝えるのが一番よい。失敗体験もあるかもしれないが、その時になぜ失敗したかを共に振り返ればそれだって勉強になる。筋道をつけて進めた仕事なら、失敗した時にどこに間違いがあったかを振り返りやすい。よって全てを成功に導く必要はない。大事なことは筋道をすっきりさせながら進めることだ。そして苦労してリカバリーするだけだ。リカバリーがどれほど大変で、どれだけ効率を落とすかを身体に浸み込ませることも、現地の人間には大切なことだ。だから僕は常に成功しなければならないなどと、余計なプレッシャーを感じてはいなかった。
 それでもマレーシア人はフィリピン人と似たところがあり、責任分担が必要以上に明確だ。言い換えれば責任分担を盾にして、極力自分が責任を取りたがらないし、面倒な仕事を人に回そうとするのである。だから彼らに、このリカバリーの大変さを教えるのがとても難しい。



↓ランキング挑戦中
にほんブログ村 海外生活ブログ フィリピン情報へ
にほんブログ村
人気ブログランキングへ



posted at 12:14
Comment(0) | TrackBack(0)
カテゴリー:マレーシア奮闘記
エントリー:マレーシア奮闘記1

広告


この広告は60日以上更新がないブログに表示がされております。

以下のいずれかの方法で非表示にすることが可能です。

・記事の投稿、編集をおこなう
・マイブログの【設定】 > 【広告設定】 より、「60日間更新が無い場合」 の 「広告を表示しない」にチェックを入れて保存する。


×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。