フィリピーナと共に
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2013年10月15日

701.Nさんの冒険 AGAIN 番外編

M「Nさん、ちゃんと家で一杯やってます?」
N「今、起きました」
M「あら? 済みません、起こしちゃいました? 再就寝して下さい」
N「ソファで寝てました」
M「店の?」
N「うちの」
M「( ̄O ̄;)」
N「ははは」
M「ご家族はもうご就寝ですか?」
N「今、上がっていきました」
M「そうですか。無事に目覚めたのを確認して? 実はこのまま目覚めないことを心配していたとか?」

M「・・あっ、返答に困っていますね」
N「今日は帰ってから、家族は半沢、私はソファ〜で少しお休みしてました」
M「こちらはまだ、最新の半沢を見れていません」
N「少し寝てから犬の散歩をするつもりが」



N「・・・・今起きました」
N「半沢の作者は同郷です」

M「犬の散歩をするつもりが・・・、夢精しましたと言われたら、どうしようか思ってしまいました」
N「いや、少しでてたかも?」
M「( ̄O ̄;)・・・夢精に無言」
N「語呂がいいですね」
M「サルマ&ナルシみたいに?」
N「マーンドナルシ」
M「????」

 随分無駄にスペースを使ってしまったが、これはNさんと僕のチャット会話の一部だ。皆さんに、少しはNさんの天然具合が伝わっただろうか?

 マニラの件をブログで展開し始めるに当たり、僕は事前にNさんから了解をもらっていたが、それでも気になり連載三作目を公開した後、もう一度Nさんに連絡した。三作目は、ゴーゴーバーでの一幕を書いたものである。

M「Nさん、Nさんの冒険シリーズ展開中ですが、大丈夫でしょうか?」
N「駄目だー。
僕はな〜んてHな、男だったんだ。
あーぼくは、もっと、大人にならなきゃとマジで反省して、落ちこんでます。
特にレイスリーさんのコメントに凹んでます。
でも、自分を見直す機会になりました。

ってな感じで、私は凹み気味です。

いやー、ブログを読んで、自分を客観視するのは、いいですね。
有難うございます。

今日は、3連休の初日です。
マークさんは、読書してるのかなー?
と考えながら、私は仕事してます。

ブログは大丈夫です。
うちのかあちゃんは、いつも通りです。
今日も、家族揃って、喫茶店でモーニングしました。

ところでですが、奥様はお元気そうで何よりです。
マークさんの、肩の痛みが、きになりますね。
また、こちらから、ご連絡します。

ドンドン書いてください。

忍者で数字をチェックしてましよ。
では、仕事します」

 Nさんの様子が分かりやすいので、原文のまま紹介した。「チェックしてましよ」は、「チェックしてますよ」の打ち間違いだと思われるが、Nさんは時々、打ち間違いかそれとも本当にそのように打っているのか分からないことがある。

 実はNさん、フィリピンから帰国後は、社会復帰するのに毎度苦労されているようで、今回も仕事が辛いとおっしゃっていた。日本に帰れば残業に休日出勤と、いつでも精神的に疲弊されている。その疲弊が先ほどのような妙な会話に繋がっているかもしれないと感じる時、僕はNさんに、大丈夫か? と問いかけたくなる。
「疲れた」「嫌なことがあって落ち込んでいる」とNさんが弱音を吐く時、僕は「よく働きよく遊べ、そうして日本男児の鏡になるべし」という趣旨のことを言い彼を励ますが、Nさんはすぐにその気になってまた働き過ぎるようだから、彼は本当に加減の難しい方だ。
 そうした日本の社会から離脱した僕には、Nさんの勤務状況が異常に映るし遠い世界の出来事のように見えてしまうが、僕もかつては同じだった。
 こうした世界で生きる人たちは、貧困ではないがまた違った苦労がある。日本人はそうやって稼いだお金をフィリピンに運び、日本人は心のゆとりを、フィリピン人は金銭的なゆとりをお互い交換し合い、慰め励まし合っているのかもしれないと、Nさんを見ていて思うことがある。

 実は最初にこのNさんの冒険シリーズを公開しようとした時、日本である事件が起きていた。知り合いの日本人-フィリピーナカップルが、思いがけず破局を迎えたのだ。その方はその一部始終をご自分のブログに公開し、僕はそれを読んで少なからず驚いた。
 本来このマニラの出来事はもっとチャラチャラした内容だったが、その方の破局物語を読み、僕のその気分が吹き飛んだ。よって、僕は当初用意していた原稿を捨てたのである。それから妙に、書けなくなってしまった。
 
 その方のブログでは、相手のフィリピーナが自分を裏切り去ったように書かれているが、僕はそれを読んでさえ、そのストーリーが信じられなかった。もちろん書き手は、女性に対する恨みつらみをそこに吐露していたのではなかった。ただ事実として、淡々と彼女の裏切り行為を描いていただけだった。そうなったのは、自分が至らなかったからだとも嘆いていた。僕もそこは、その通りだと思っている。なぜなら僕は、会って自分の目でその人となりを確かめた相手の女性の出来事として、その展開がどうしても信じられないからである。いや、展開は事実だとしても、女性が男性を裏切る気持ちの部分で、読み手に誤解を招く書き方ではなかったか。
 その女性に対する自分の印象は、芯が強く頭の良い女性であり、彼女の裏切り行為の顛末を読んでさえ、僕は彼女がお金や快楽のために簡単にパートナーを裏切ったとは信じられなかった。その自分の考えは今でも変わらず、僕は彼女が心の奥底にしまい込んだ真実の思いを、いまだに信じている。表面的な結果をみれば酷い裏切り行為だが、その女性が味わった葛藤は、さぞかし激しいものではなかったかと想像しているのだ。

 その出来事になぜそこまで影響を受けてしまったのか。それは、僕自身が信じていた人の裏切り行為をブログで目の当りにし、他人事に思えなくなってしまったからである。自分の目は節穴だったのだろうか、ならばそれは、自分のパートナーにもあり得る話ではないだろうか。その自分の考えに、僕は戦慄を覚えるほどの現実味を感じた。
 しかし同時にこの出来事は、フィリピンの生活環境が、日本人が考えるほど甘いものではないという証左だったのだろうことを、僕に激しく感じさせた。その女性は家族を含めた自分たちの将来のために、長年連れ添い世話になった男性を捨て、他の男を選んだというストーリーだからだ。

 今回の「Nさんの冒険 AGAIN」五話の中で、僕はそこに感じたものの一部を少し訴えたつもりである。心の繋がりのこと、貧困との闘いのこと、その闘いの現場のことである。
 自分がゲームの盤上からはみ出しそうになれば、フィリピン人は真剣に、次のゲーム盤を探さなければならないのだ。愛や操を大切にしたいと思っても、生きていけない愛と操は涙を飲んで捨てなければならないのが、フィリピーナなのである。愛と駆け引きが表裏一体になった世界で、彼女たちは生きている。
 フィリピンという国は、その国に生まれ育ったフィリピン人にも、そして日本人にも、それだけ過酷な国なのだろう。それゆえに、そこでは生死や人生を賭けた様々な勝負が展開されているのだ。時にはそれだけの思いを、こちらも同じ重みを感じて受け止めなればならないということを、頭の隅にしっかりと焼き付けておくべきと思われる。
 Nさんの冒険を、そのような視点で読んでいただけたなら幸いだ。



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カテゴリー:Nさんの冒険
エントリー:701.Nさんの冒険 AGAIN 番外編
2013年10月14日

700.Nさんの冒険 AGAIN5

「Nさん、またぁ〜? どうしちゃたの?」
 昨日Nさんが暗黒喫茶から女性を連れ帰ったことで驚いた僕は、まさかの二晩連続に、そう言わずにはいられなかった。
 韓国料理の店内には、少し癖のありそうな水商売の経営者っぽい老男女が一組いるだけで、あとはNさんたちだけのガラガラ状態だった。レジカウンターの内側にやる気のなさそうな男性店員が三人立ち、僕という新しい客が入っても無駄話に興じている。とりあえず丸テーブルに座ると、僕の目の前には、暗黒喫茶に度々出没する妖怪女とはかけ離れた、清楚で大人しそうな女性が静かに座っていた。そして僕が挨拶をすると、きちんとした挨拶を返してくれた。これはきっと、Hさんの面接をパスした女性だと直感した。バーでも暗黒喫茶でも、ほとんど見ないタイプの女性である。
 Hさんは暗黒喫茶からDさんとどこかへ消えたそうで、女性を連れ帰ることになったNさんが、二人だけでタクシーで帰ってきたそうだ。二人の注文した二種類のうどんがテーブルに登場し、僕も自分の分をオーダーした。真っ赤でとても辛そうな方が女性、野菜味の胃腸に優しそうな方がNさんの注文品だった。どのような経緯でそのような注文になったのか知らないが、女性はこんなに食べられないと言った。彼女は話し方に落ち着きや品があり、英語もきちんと話せるお嬢さん風である。暗黒喫茶から連れ帰ったということはおそらくそのような稼業の女性だろうが、どの角度から見てもそう見えないことに、僕は不思議な思いだった。

 食事をしながら、しばらくその女性と話してみた。彼女は暗黒喫茶に出入りする友達を訪ね、ある地方から出てきたばかりで、こうして男性についてくるのは初めてだと言った。普通なら信じられない言葉だが、実際の彼女の雰囲気から、それが嘘でないような気もした。日本に行ったことはある? と訊くと彼女は、日本はないが韓国は行ったことがあると言った。だから韓国語は少し話せるが、日本語は全く分からないそうだ。
 少し前、韓国にいる従姉を頼り、三か月間(一か月の勘違いかもしれない)そこに滞在していたそうだ。僕はここで、海外旅行を楽しむ余裕のある人が、暗黒喫茶で客を取る仕事はしないだろうと思った。おそらく彼女は、韓国で同様の仕事をしていたのではないだろうか。そして帰国後、韓国で稼いだお金が底をつき、暗黒喫茶に出入りする友人を頼り、同じ仕事を試してみようとしているのではないか。
 彼女の口調はゆったりで一定の速度が維持され、何かを取り繕っている様子はなかった。全て本当のことを話しているなら、韓国での仕事を確認したら正直に答えてくれそうな気もしたが、人柄が分かればそれを詳しく訊くことに意味もなく、僕はそれ以上追及しなかった。
 
 彼女は飛び抜けた美人ではなかったが、それなりの魅力を持つ人だった。その魅力が人柄から発せられるのか、それとも純粋に外観のせいなのか、僕は彼女と少し話しをしただけで、それが分からなくなった。彼女は、この子ならこの先長く付き合っても良いと思わせる何かを持っている。そのような女性は、情が移りやすくかえって危険だ。火遊びは火遊びにとどめておかないと、後々大変なことになる。特にNさんは女性に惚れやすい体質なので、少し心配だ。それだけ彼女は、妙に気を引かれる女性である。僕は彼女の何がそうなのかを考え、少し分かったような気がした。彼女はどこかに、影を持っているのだ。彼女が時々見せる笑顔にさえ、フィリピーナ特有の底抜けな明るさがない。決して暗いわけではないが、笑いも慎ましやかで決して出しゃばらない。そして態度も会話も常識的である。Nさんも既に彼女のそのようなところを見抜き、かなり気に入っているようだった。

 食事中、この後三人でカラオケに行こうという話になった。既にモナとユリは寝ているので問題はなかった。特にNさんは、マニラ最後の晩となる。Nさんが行きたければ、僕も付き合いたいと思った。どうやらNさんは、彼女をカラオケで楽しませたいようだった。マニラ初日に連れていった下宿先の女性が、カラオケをことのほか楽しんでくれたので、彼女に対しても同じようにしたいと思ったようである。
 三人で徒歩圏内のカラオケに行った。しかしカラオケ店内で彼女は一曲も歌わず、両手を膝の上で重ねて姿勢よく座っているだけだった。もちろん会話もしたし人の歌はきちんと聞いていた。心ここにあらずでもなければ、何かにふて腐れている様子もない。ご主人様がしたいことや行きたいところがあれば、それに素直に従うのが私の仕事だと言わんばかりだ。
 これまで友人がどこかで連れ出した女性は、ホテルに行くまで愛想がよく、部屋に入ってから掌を返したように態度が変わったという話を、僕はこれまで何度も聞いている。果たしてこの女性もそうなのだろうか。カラオケが閉店の三時に、僕たち三人はそこを締め出された。

 翌朝朝食時、レストランでNさんと会った。もちろんNさんは、昨夜の彼女と一緒だ。ほんの少しの立ち話しで、Nさんが彼女のことを、優しく献身的な女性だと褒めだした。朝彼女はきちんとNさんを起こしてくれ、歯ブラシを歯磨き粉が乗った状態で手渡し、部屋や荷物の片付けをしてくれ、最後に彼女は、Nさんの靴を綺麗に揃えて自分の前に出してくれたそうだ。まだ二十歳を少し過ぎたばかりの女性でそこまでしっかりしているのは、逆に不思議な感じがした。
 彼女はその日、Nさんを空港に見送りに行くと言い、僕が手配した車に二人が乗った。我が家はモナとユリも一緒だった。空港でNさんと別れた後僕とユリはホテルに戻り、モナはそのままその車でケソンシティーに行った。
 女性はホテルまで戻れば友人宅に歩いていけると言うので、帰りも同乗した。Nさんがいなくなってからも、女性の態度は昨夜と何一つ変わらなかった。自分を紹介する際、彼女はIDカードを差出し名前や生年月日・住所まで教えてくれた。田舎の自宅に帰るのは一週間後で、彼女はそれまでマニラの友人宅にいるそうだ。
 彼女が眠そうにしているので、ホテルに到着するまで寝てもいいよと言ったら、彼女は昨夜一睡もしていないので、眠くてごめんなさいと言ってきた。彼女はNさんの希望起床時間に彼を起こすと約束したので、寝ずにその時間を待っていたと言うのだ。そのことを知って僕は、この人はこれまで見たことのないタイプのフィリピーナだと改めて思った。なぜこのような女性が、暗黒喫茶をうろついていたのだろうか。僕はやはり、とても不思議な感じがした。

 Nさんが日本に帰ったあと、彼はこの女性と連絡が取れなくなった。教えてもらった電話番号やFBページは全て消滅し、彼女はまるで、自分の痕跡を消すように姿が見えなくなった。僕はNさんが今後、この女性と連絡を取りながら彼女を援助することになると予想していたから、彼女の方から消えたことを意外に思った。そして、ますます彼女のことを不思議な女性だったと思うようになった。それから色々と考えて、彼女のことを時々Nさんと話すことがある。

 彼女はおそらく、家庭の事情で韓国に働きに行ったのではないか。同じく稼ぐ必要があり暗黒喫茶に出入りした。Nさんが日本に帰国した後も、マニラでの一週間はおそらく暗黒喫茶で客を探したのだろう。ある程度稼いだなら予定通り田舎に帰っただろうし、稼げずにマニラ滞在を延長したかもしれない。そしてその商売で何とかなることが分かれば、いずれまた、暗黒喫茶に現れるかもしれないし、韓国に出稼ぎに行くかもしれない。
 これは僕個人の勝手な想像だが、彼女の品行方正な態度は、韓国で仕事をした際、厳しい韓国人に叱られ文句を言われながら(場合によっては蹴飛ばされながら)体得したのかもしれない。仕事ではこうしなければ、激しく叱られる。自分が意見や希望を言う資格はなく、全て一時のご主人様に従うのみ。
 彼女の不思議さは、彼女がどこかに自分の感情のかけらを置いてきたかのような、何か普通と違う感情的欠落があったことではないかと僕は思っている。どこか抑圧されたような、自分というもの無理矢理封印したような、彼女に対してはそんな印象のかけらが残るのである。
 僕はそれと同じ印象を持っていた人を、よく知っている。その人は、このブログ読者ならば容易に想像がつく人である。かつてその女性のそれが解きほぐすのに、僕は随分時間をかけた。暗黒喫茶の彼女の不思議さはまさにその人と重なるもので、かつてのその人もまた、家族のために自分を犠牲にしようとしていた人であった。

 こうしてNさんの数度目の冒険が終わった。相変わらずNさんは、日本へ戻ってからも下宿先の女性やその親戚に翻弄されている。前回の渡比で知り合った女性も「困った時の神頼み」で、Nさんへ不定期に連絡を入れるようだが、今回一夜を共にした女性二人は、まるで音信不通となった。
 Nさんは相変わらず連絡を取ってくるフィリピーナに対し、少し自己主張ができるようになった。つまり彼女たちの連絡やお願いを、上手にさばけるようになったのである。その分ストレスが減り、快活に彼女たちと接することができているようだ。

 Nさんは再び、それも近いうちにフィリピンを訪れたいと言っている。
「また暗黒喫茶に行きたいんですか?」
「まさか、もうあそこは行かなくて大丈夫ですよ。次は田舎に行って、綺麗な自然の中で何も考えず、一日中釣りをしたいです」
「何もしない・・、本当のリゾートってやつですか。そう言えばNさん、まだフィリピンの自然を堪能する経験をしていないですね、分かりました、次はとっておきのイベントに招待しますよ。川上りをして滝壺探検なんてどうですか?」
「え? 川下り?」
「違いますよ、川上りですよ。人力で川上に逆行するんです。迫力はあるし、ものすごい自然を満喫できますよ。フィリピンにはいいところがたくさんありますから、そんなのはどうですか?」
「いいですねぇ、それじゃ次は、是非それでお願いします」
 
 Nさんは本当に、自然と戯れるだけで満足できるだろうか。人間との関わりは、女性でも男性でも変幻自在で面白い。そして厄介だ。無機質な厄介さは疲れるだけだが、しかし有機質なそれは結構面白いものである。それは人間が動物だからであり、人は生命力を感じさせるものに魅かれるからだと思われる。
 日本は人との関わりを含め、多くのものが無機的になってしまったが、フィリピンはまだまだ、様々なものが十分有機的である。フィリピンにおける人との関わりは、特にそうだと言ってよい。
 Nさんの冒険は、人との関わりを求めながら、まだまだ続きそうな気配である。



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カテゴリー:Nさんの冒険
エントリー:700.Nさんの冒険 AGAIN5
2013年10月12日

699.Nさんの冒険 AGAIN4

 Nさんにこれぞという子が見つかった時、HさんがNさんのため、その子と値段交渉をしてくれた。Hさんから聞く話によると、それはNさんがぼったくりに遭わないためであるが、むしろ目的はそのやり取りを通し、Hさんが女性の態度や性格のようなものを確認することが大きかったようだ。得体の知れない女性をホテルの部屋に入れるのである。目撃者のいない密室では、女性が自作自演で何かを騒ぎ出せばNさんはたちまち窮地に追い込まれる。もしくは突然おかしな男性が登場するかもしれないし、本人が部屋から貴重品と一緒に姿を消すかもしれない。部屋に気軽にゆきずり女性を連れ込む人は少なくないが、それは当然それ相応のリスクを伴う。もちろんそのリスクには、病気をもらうというものまで含まれる。そしてHさんはNさんに、バスルームに入る時には財布を持つように等々の諸注意も伝えてくれたようだ。HさんはNさんのため、本当に細かく気を遣ってくれたのである。その話を聞いた時、僕は頭の中に、普段陽気なHさんが騒然とした暗黒喫茶の中で、目を細めて女性を厳しくチェックをしている姿を思い浮かべた。
 朝のレストランで見かけた女性は、そのようなベテランHさんの厳しい面接をパスした人であった。よってNさんの話によれば、彼女は性格がよく優しい女性で、トラブルは一切なく金額も取り決めプラスアルファ(気持ち)の納得価格で済んだそうだ。
 僕は朝のレストランで、Nさんのお相手女性をほとんど見ておらずもちろん直接話もしていない。だから実際にどのような人なのか分からないが、レストランで壁の裏からNさんと一緒に顔を出したひょうきんな様子は、Nさんと女性の間にきちんとコミュニケーションが存在するように見え、女性はしっかりNさんに付き合ってくれたのだろうことが伺えた。暗黒喫茶でのHさんの見立ては、正しかったということである。

 ちなみに僕は、Nさんがその女性と夜をどのように過ごしたのか、それについては一切知らない。それはNさんやその女性のプライバシーに関わることで、僕は部屋での二人の様子を聞かなかったしNさんも一切語らなかった。ベッドの上でのことや女性の身体的特徴の話題を友人と共有し盛り上がるのは、その女性の尊厳を傷つけ馬鹿にすることと同じである。女性が食い扶持を稼ぐためそのような行為をすることは賛否両論あるだろうが、そのような女性だからと相手に対する尊重のかけらも失った無神経な方を、僕は好きではない。それはその場に当人がいなくても関係ないことである。だから僕は、Nさんがそうでなくて安心した。
 つまり僕は、Nさんがその女性と性交したのかどうか、実はそれすら知らないのである。夜は一緒に過ごしたけれど、実は体の関係は何もないということも、いまだにあり得るのではないかと思っている。

 Nさんが暗黒喫茶から女性を連れ出したのは、一つには僕のせいがあるのかもしれない。僕は以前、売春の件で自分の考えをブログに披露した。その時一部で軽く話題になったが、Nさんとにはその件で、ブログには書いていないことも含め話しをした。
 フィリピンの夜の世界で働く女性を一度でも直接見れば、彼女たちの多くが贅沢をするためにそのような仕事に携わっているのではないことが分かる。服もバッグもアクセサリーも、ブランド品など身につけていない。住んでいる場所は、地方出の女性は友人と共有で借りた安アパート、地元の女性であれば貧民街が多く、彼女たちの生活の有様を見た時に普通の日本人は圧倒されるだろう。そんな世界で自分や家族の命を繋ぐため働く女性に、それは悪いことだから止めなさいと、僕は言える自信がないのである。
 僕はかつて自分がこの目で見た貧民街の生活の様子、教育不足による常識や貞操観念の違いをNさんに語り、それらは自分の目で確かめ自分の心で感じた上で考えるしかないと言った。日本人が日本の社会で暮らすだけでは到底理解できない、悲しくどうしようもない現実が、フィリピンを含むアジアの中には当たり前のように存在するのである。
 日本に働きに行くことができるフィリピーナはその中ではるかに幸せな方で、行きたくても行けない人の方が圧倒的に多い。日本人と常識の違い過ぎる教育不足の女性は、コネがなければ面接で日本の客商売に適応できないと判断されるからである。だから日本のフィリピーナしか知らない日本人には、現地の実態が中々想像できないと思われる。洪水で家電製品が壊れて大変だなどは中流の部類の話で、底辺の生活には電気もガスもない。裸電球が灯っていると思えば、電気は近くの電線から泥棒していたりする。僕は初めて蝋燭と炭と床が土(土間)の家の生活を見た時に、怖くて家の中に入るのが躊躇われた。もっともその家の中とは、入り口から見える部屋が一つきりである。よって現地の実態は、そのような生活をする女性と実際に二日や三日行動を共にしなければ、到底その実感を得ることはできない。教育が足りない、常識が違うというのがどのようなことか、それもしばらく一緒に行動しなければ分からない。

 Nさんの頭の隅には、ならば自分も自身の目で見て確かめてみたいという思いがあったと想像できる。Nさんは、これまで自分が関わり知り合ったフィリピーナからヘルプ要請があれば、見返りなしで彼女たちを気軽に助けてやっていた。しかし彼は、自分のその行為に疑問を持ち始めているのである。お金がもったいないという単純なことではなく、その行為が双方にとって意味があるのかないのか、その背景には何があり気軽に助ける功罪は何か、自分にできることとできないことは何で、自分がそれをして良いのか悪いのか、そして今後はどのように関わればよいか・・、フィリピーナにお願いされるまま流されてきたNさんは、おそらくそれを強烈に知りたいのである。僕はNさんとの会話を通し、ずっとそれを感じてきた。だからこそ僕は、Nさんにそれを考える機会を与えたかったのかもしれない。ただし、覚悟がないなら自分の家庭を壊す真似だけはしないで欲しいと、それだけは念を押すようにお願いしてきた。本来そのつもりがないなら、厄介なフィリピーナなど一切関わりを持たない方がよい。しかしNさん自身がそこへ首を突っ込みたいのであれば、流されるよりも何か信念を形成して臨んだ方が良いだろうと僕は思うのである。気が良いだけでは、そして単なる親切な足長おじさんを気取るには、フィリピーナ(とその背後にいるフィリピン人)は手強すぎるからである。それは策略に長けているという意味ではなく、フィリピーナは日本の閉塞した社会に疲れた人の心を癒す要素を、生まれながらに多く持っているからだ。こちらの鼻の下が伸びてしまえば、これはひとたまりもなく餌食になる。餌食になってもよいが、どうせ餌食になるなら納得して身を捧げる形の方がよいではないか。そうであれば結末がどうでも、心の傷はより浅く済み、誰かを憎む醜態を晒さずに済む。

 Nさんにとってマニラ三日目、その日は更に日本から別の友人Sさんが合流し、また地元に住む友人Sさんも加わり盛り上がった。日本Sさんは、フィリピンに仕事と女性絡みの用事があり、その日程を僕のフィリピン帰省に合わせて調整してくれたのだ。日本Sさんにはブログで公開することを確認していないので詳しく書けないが、この方も、これまで散々フィリピーナの餌食になってきた遍歴を持つ。一時はもう二度とフィリピーナとは関わらないと宣言に近い言葉を吐きながら、マニラを訪れる少し前は「でもやっぱり好きだぁ〜」と言い鼻の下を伸ばして渡比したダンディガイだ。この方は妙に固いところがあり、夕食後にみんなで行ったカラオケや、更にその後行った暗黒喫茶でも紳士を貫いていた。元々Sさんはホテルに女性を連れ帰るつもりが全くなかったので、暗黒喫茶に同行したのは社会見学の一環という趣旨である。

 僕もこの日は、少しだけ暗黒喫茶にお邪魔した。そこで僕は、Nさんが妙に落ち着きを失っていることにすぐに気付いた。仲間内で話をしている時でも、Nさんの目は店内のどこかを彷徨っている。Nさんは昨晩の女性に再び巡り会えないか、そんなことを期待しているのではないかと僕は勝手に想像していた。Nさんの目が彷徨っていると言いながら、実は僕も、自分の目があちらこちらに彷徨っていることを自覚していた。どんな女性がいるのか、連れ帰りはあり得なくても好みの子がいるだろうか、そして自分を視線で誘惑する女性に気付いた後は、今度は変にそちらが気になった。そして想像の世界で、この子だったら一緒に帰っても良い、これは危ないなどと勝手に遊ぶのである。
 しかし所詮はそれだけで、長居は無用と僕は先に帰ることにした。日本Sさん、在比Sさんも僕と一緒に帰ることになり、再びHさんとNさんがそこに残ることになった。その時既に、在比Dさんも一緒だったかもしれない。

 ホテルの部屋に戻ると、在比Sさんの奥さんがモナと一緒にベッドで寝ていた。夕食を共にした在比Sさんの奥さんとモナは以前から友人で、夕食後一緒に僕たちの部屋に戻ったのだ。その後しばらく話をしていたようだが、待ちくたびれて寝てしまった。それでも時間は十一時をやや回った頃ではなかっただろうか。
 在比Sさんの奥さんを起こし、これから車で帰るご夫婦に目覚まし用のコーヒーを淹れた。コーヒーを飲みながら少し話をし、二人が帰ったあとにモナは再び眠りについたので、僕はNさんに電話を入れた。Nさんは翌日帰国予定だったが、僕は翌日予定した用事のために手配していた車で、Nさんを空港まで送る約束をしていたのである。しかしホテル出発時間を決めていなかったので、その日のうちにそれをNさんに連絡しておきたかった。
 数回のコールですぐに電話に出たNさんは、意外なことを言った。実は今、ホテル前の韓国料理店にいると言うのである。ならば直接会って相談しようと僕も階下に降り、既に人気のないロビーを通りNさんの居る韓国料理屋に行ってみると、そこにNさんと一緒にいると思っていたHさんは居らず、Hさんの代わりに僕の初めて見る女性が、丸テーブルの前でNさんと隣り合わせに座っていた。この女性がまた、非常に興味深い人だった。
(次回に続く) 



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