フィリピーナと共に
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2009年06月30日

リン90 愛情のかたち

かつてモナが土地を買うお金を援助して欲しいとお願いしてきた時に、僕がそれを断り、しかも怒って彼女と連絡を絶ってしまってから、彼女は何か問題が起こっても僕には一切お金の話をしなくなった。
僕はそれに甘え彼女には一切の金銭援助をしなかったし、プレゼントらしいものもあげたことがなかった。

フィリピンパブで働いていると、誰それはお客さんからゴールドのネックレスをもらったとか、ビトンのバッグをもらったなどということが、仲間内で自慢のネタになることくらい僕も知っていた。
おそらくそれは、個別の売り上げ金額と共に、彼女たちの一つのステータスシンボルにもなっているのではないかと感じることさえあった。
くだらない見栄だということは分かっているのだが、しかし現実にそのようなスタイルがあり、そのような世界にモナは身を置いている。

モナの親友エレナも、当時は恋人の加藤さんから頻繁にブランド品のプレゼントをもらっていたし、月々の小遣いももらっていたようだった。

モナは僕から何ももらっていないことを、誰かと比較して卑下することはなかったし、もちろん僕に対して何かを要求することもなかったが、そんな周囲の人たちと自分を比べ、惨めな想いをしていたり、我慢していることはないのだろうかと僕の方が考えるようになっていた。
だからモナがお客さんからもらったプレゼントを少し嬉しそうに見せてくれると、僕はやきもちを妬くどころか、ほっとするような安堵感を覚えた。
僕がして上げられないことを誰かが代わりにしてくれることに、感謝の念を抱いていた。

その相手が強烈に嫌らしい下心を持った客ではなく、純粋に彼女を可愛がってくれる気持ちを持ってそのようなことをしてくれるのであれば、それは大歓迎だったのである。
もちろんそんなことをしてくれる人たちに100%の純粋な気持ちだけを期待できるはずもなかったが、相手が普通の人であれば、あとはモナの対応の問題である。
その点に関して、僕はモナのことを信用することができた。

モナは僕に対して秘密を持つことを嫌った。
何事も全て話していたかどうか、僕に言わないことが本物の秘密だとも言えたが、僕が感じていた限りでは彼女は全ての出来事を僕に話してくれているように思えた。
だからモナに御忠心だった客に関して、僕はほとんどの情報を持っていたはずだ。

モナは僕とデートの後に客との同伴が控えている場合、6時にそこで会う約束だからあなたはこのコーヒーショップで二人を見ていなさいと言ってくる。
「僕がなんで監視みたいなことをしなくちゃいけないんだ。いやだよ。」と言うと、「だってあなた心配でしょ」と彼女が言う。
私は仕事で一緒にご飯を食べるだけで、それはデートではないということを見れば分かるというのだ。
そして相手が優しいジェントルマンだということも分かれば、あなたは安心するでしょうと付け加えた。
「いいよ、信じてるから」と言い僕は電車の乗るべくすぐに駅に向かうのである。

しかしモナをホテルへ連れ込むために、馬車道通りで彼女を無理やりタクシーに押し込もうとした客が現れた。
彼女が抵抗したために、その客はそのまま一人タクシーに乗り立ち去ったらしい。
その客は僕とモナが初めて出会った店の客で、モナが日本に戻ってきたことを知り何度か横浜の店に通っていたそうだ。
普段は優しい良識のあるサラリーマンに見えたが、立ち去る時の捨て台詞は「さんざん金を使わせておいて、お高くとまってるんじゃねぇ」であったらしい。
何か特別なプレゼントなどをもらったわけでもなく、彼が使ったお金というのはお店での飲食代だけである。

それは最初から了承済みの当然支払うべきお金で、別に彼女がそれを自分の懐に入れたわけでもなければ、後のお楽しみの代償でもなかったはずだが、それがわからない世間知らずのおやじだったのだろう。
とにかく良く相手を見て気をつけなさいとモナには忠告したが、外国人相手だとそのような勘違いをする輩が少なからずいるだろうというリスクについては、僕も十分認識していた。

それからは、僕がたまたまその場に居合わせる場合、コーヒーショップで彼女の安全を確認してからその場を離れるようになった。

同伴をしている客にしてみれば屈辱的なことかもしれないが、彼女は客と二人で食事の場所に向かう時に、わざわざコーヒーショップの店外テーブルに座っている僕の前を通りアイコンタクトをして行く。
そして通り過ぎた後に自分の背中に手を回し、客に気づかれないように問題無しというOKサインを出しながら立ち去るのだった。
モナは無邪気にそれを実行しているが、自分の恋人が見知らぬ男と一緒に食事に行くということが、僕を割り切れない複雑な心境にさせることを、彼女は全く理解していないようだった。
そんなことはおかまいなしで、彼女にとっては正直が一番だったのである。
だから僕に対しても正直さを常に求めてくる。
つまりは内緒で別の女をつくるなということであった。


このようにして、彼女は自分の仕事が二人の関係の障害にならないようにいつも気を使っていた。
それが僕にとって、彼女の身に危険が及んだとか、嫌な目にあったというような耳の痛い話であっても、彼女は全てを僕に報告していたように思える。
だから彼女が何かプレゼントをもらったとしても、それほど気にはしていなかった。
ただ一点、そんなに高価な物をもらって後で大丈夫なのかと尋ねたことはある。

「だってそれはお客さんの気持ちでしょ?いらないって断ることできる?その方がかわいそうでしょ!アコから頂戴っては言わないよ。それにアコは何も嘘言わないし、聞かれたらあなたのことも子供のことも、全部本当のことを言うわよ。」

言われてみれば、それも一理あるように思えた。
とりあえず相手を騙して金品を引っ張ることしていないというので、それ以上僕から彼女に言うことは何もなかった。
そしてそんな客には、僕の代わりに彼女を楽しませてくれていることに感謝するべきであった。
それは、彼女にいつも幸せを感じていて欲しいと願う僕の少し歪んだ形の、モナに対する愛情の芽生えだったような気がする。

振り返ってみると、リンには物質的に相当尽くしてきた経緯がある。
それに比べてモナに対しては、僕がたくさんの癒しをもらっているにも関わらず、感謝の気持ちを何も形で示していないことが気になり始めていた。
もちろん愛情の大きさがプレゼントや与える金銭に比例するわけではないが、気持ちをきちんと形にして伝えることは決して悪いことではない。
その方法さえ間違わなければ、それは二人の心を豊かにする一つの重要な手法である。
いや、手法というよりは、やはりそれは気持ちそのものなのである。

僕は彼女のために、少しは無理をしてみようかと思い始めていた。
リンには無秩序な奉仕をして失敗したが、それさえ気を付ければ問題はない。
そもそも僕には彼女の金銭感覚を麻痺させるほど尽くしてあげる体力は残ってはいないから、それはもともといらぬ心配でもあった。


この頃から僕の気持ちは序所にモナの方へと向いていった。
リンとの関係は断ち切れておらず、彼女と電話やメールで話をすることはあったが、その内容はリンの母親や姪たちは元気にしているか、生活はできているか、子供たちが学校で困っていることはないか等々で、二人のこれからの楽しみや将来の話しをすることはなくなっていた。

やはりあの裏金融での借金事件が、二人の関係に壁を作っていた。
それでもリンが積極的に僕に愛を求めてきたのなら、僕がモナとの関係にブレーキをかけることはできたかもしれないが、彼女にはそのような情熱は残っていないような気がした。
リンはもともと情熱的な感情表現はしない女でもあったが、既に彼女には僕との関係を諦めている様子が見え隠れしていた。

僕もその方が都合が良いと考えていたのかもしれない。
リンを一人の女性として忘れられない感情に惑わされ続けてきた。
しかしその頃少しわかってきたのは、彼女との関係を長い目で考えたときに、自分がリンと一緒にやっていける自信を完全に喪失しているということだった。
愛さえあれば現実的な生活がうまくいくわけではない。
愛情があっても、いつもどこかで迷っていたのはそのせいだった。
だらだらと曖昧な関係を続けるならば行けるところまで行ってもよかったが、その終着駅はよもや結婚ではない。
それが僕の長い間抱えていた迷いであることが、自分の中で明白になりつつあった。
モナの一挙手一投足が、僕にそれを強く感じさるようになっていた。
自分自身でそれが、都合の良い男の言い訳のような気もした。
しかしリンには十分尽くしたではないかというもう一つの言い訳も、僕の中には存在していたのだった。
リンが沈黙を保っている間に、このまま少しずつ身を引いていこうと思っていた。


僕は何かモナを喜ばせることを考えていた。
そういえば、彼女は以前横浜グランドインターコンチネンタルという三角形の形をしたホテルに泊まりたいと話していたことを思い出した。
どうせ横浜に宿泊するのであれば、豪華な気分に浸れるホテルを選択するのも一つの手だと思った。

早速パソコンに向かい、“ホテル 予約”で検索をしてみる。
ホテル予約サイトがずらずらと出てきた。
そして横浜のハイクラスと言われるホテルが、ジャランのようなホテル予約サイトで1泊2万から3万で泊まれることがわかった。
実際にはチェックインタイムを遅くしたり、チェックアウトを早める、もしくは日にち限定でもっと安く宿泊できるプランも多数あることが判明した。

モナを喜ばせるために、初めて積極的に何かをしようと思ったことである。
僕は念入りに調べあげた。
40を過ぎた男がすることにしてはスマートさがないような気もしたが、誰かが見てるわけではない。
とりあえず今汗をかいて、当日すっきりいこうと様々なサイトの隅々をチェックした。

インターコンチネンタルを予約をすることはできたが、インターコンチネンタルの隣にあるパンパシフィックホテルが僕の目に留まった。
パシフィックフロアという特別階の宿泊が1泊2万5千円程度だったと記憶している。
特別階は一見VIP待遇である。
モナの希望した三角ホテルではないが、きっと彼女は喜ぶに違いないと自信を持って予約をした。

そしてモナには、少しきばったホテルに予約したことを内緒にしながらその当日を迎えた。

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2009年06月29日

リン89 モナの夢

モナの仕事は日曜が休みだった。
よって彼女は土曜の仕事終わり(日曜の明け方)から月曜日の夜まではフリーになる。
彼女はそのチャンスに僕の部屋へ来たいといつも話していた。

彼女が僕の部屋に来る場合、僕は横浜に迎えに行き、更に彼女が帰るときに送り届けることになる。
僕は仕事の納期が迫っていると土曜日も日曜日も関係なく、全力モードで仕事に没頭しなければならない。
仕事が詰まっている時は、送り迎えのロスタイムが本当にもったいないことがあった。

迎えに行く時は明け方で道も空いているため眠いのを我慢するだけでよかったが、送り届ける時には午後から夕方にかけての移動になる。
移動時間は夜の2倍や3倍かかるので、確実に半日はつぶれてしまうのだ。

それが大変だからいつも断っていたのだが、とうとう根負けして彼女を僕の部屋へ招き入れることになった。
夜中の1時に自分の部屋を出て、約40分かけて彼女のアパートの近くに到着した。

モナは自分が僕の車に乗り込むところを店の女の子に見られたくないといった。
さらに彼女たちは僕の顔を知っているから、待っているところを見られるだけで感づかれると心配した。
そのために僕は表通りを避けて、どこか目立たない場所で待つ必要があった。

その辺りの裏通りは道幅が狭く、しかも一方通行が多いため車を停車させる場所がすぐに見当たらない。
彼女のアパート周辺に着いてから、その周囲を道路沿いにぐるぐる回り、ようやくコインパーキングの脇に停車スペースを見つけモナに電話を入れた。

すぐ目の前がT字路になっており、そこを通るのはタクシーかガラスにスモークを張ったいかつい高級車ばかりだった。
僕の庶民派カーはその中で少し浮いているような気がした。

すぐ脇のラーメン屋の親父が閉店後の後片付けで店の前に出て、エンジンをかけたまま車の中でモナを待っている僕をじろじろ見ている。
こんな時間に人目を避けるような場所に車を停車させ誰かを待っているとすれば、きっと飲み屋で働かせている女房でも迎えにきたと思っているに違いない。
早く着て欲しいとバックミラーで彼女のアパートの方向をチェックしていると、薄暗い通りにようやく彼女の歩いてくる姿が浮かび上がった。

「こんばんは。待った?」
「こんばんは・・」と少しうんざり口調で挨拶を返しながら、僕は車を発信させた。

「結構待ったよ。なんでお店の女の子に見られるとまずいの?」
「だって私は結婚して旦那がいることになってるでしょう?」
「だから?他の女の子はそれがイミテーションだって知らないの?」
「内緒にしてるよ。だってイミテーション結婚がどこからばれるかわからないでしょ。だからそれ知ってるのエレナだけよ。」

かなり入管が厳しくチェックしているので、用心には用心を重ねてということらしい。

「あなたの部屋に行くの、久しぶりだなぁ。アコ楽しみにしてたよ、それ。」
「前のマンションはもうなくなった」
「なんで?それじゃこれからどこに行くの?」
「新しいマンション。でも部屋はひとつしかないよ。それは買ったんじゃなくて、毎月お金を払って借りるマンション。前のところはお金払えないからもうなくなった。」
「なんでお金払えないの。何があった?」
「いろいろね。だから貧乏だっていつも言ってるでしょう。それ嘘じゃないよ。」
「そっか、でもあなたと一緒だったらアコはどこでもいいよ。そこは遠いの?」
「前の場所より少しだけ近いよ。1時間かからない。」
「そうか。ねぇマハール、アコこの車に乗ると思い出すよ。前とぜんぜん変わらないなぁ。あの場所はまだある?同じ?」

モナは二人が初めて結ばれた河原の話をしているのだった。
よほど僕の住まいに行けることが嬉しいのか、モナは最初から機嫌がよかった。
二人が初めて会った頃も彼女は自分を僕のマンションに連れて行けとしつこく迫ったきたが、僕の暮らしを確認したいという彼女の気持ちは理解できた。

「あの河原の場所はね、まだあるけど少し変わっちゃったよ。パーキングができて綺麗になっちゃった。」
「えー、残念だなぁ。アコあのままの場所がよかったのになぁ」


彼女は疲れていても、僕が車を運転している時に居眠りをすることがない。
それが彼女流の気の使い方なのか、運転中はいつも話し相手をしてくれる。
その時もマンションにたどり着くまで、彼女はずっと起きていた。
途中でコンビニに寄り、翌朝の朝食用パンとオレンジジュース、卵などを買い込んでから部屋へ帰った。

僕の新しい住まいは部屋が少し広めの1ルームマンションで、建ってからまだ日が浅く綺麗だった。
むき出しのコンクリートがモダンな雰囲気をかもし出し、入り口もオートロックになっている。
マンションの入り口は車通りの多い大通りに面していたが、部屋は大通りから小路に入った道路に面している。
しかも部屋の窓は二重サッシになっているため窓を閉めると外部の騒音はほとんど気にならない。
窓のすぐ向こうは高校の敷地になっていて、その敷地内にある大きな木々の緑が目の前に広がっている。
狭いながらも過ごしやすさはまあまあだった。

モナは部屋に入るなり、早速色々とチェックをしているようだった。
敢えて確認はしなかったが、チェックしているのは絶対に女の気配である。
以前のように部屋数があるわけではないので、部屋の中でぐるりと一周見渡せば大体はチェック完了となる。
しばらくぶりの監査は、無事パスしたようだった。

モナが一番興味を引かれたのは、引っ越してから購入した大型液晶テレビだった。
そして更に喜んだのは、その大型テレビでいつでも好きな映画をチョイスして見ることができる光TVだった。(※当時はオンデマンドTV)

まずは二人一緒にシャワーを浴び、彼女にはパジャマ代わりに僕のTシャツを貸した。
ひと段落着いたところで二人でベッドの上に寝転がり、さっそく映画鑑賞タイムの始まりである。
映画好きの彼女は「アコこれがあったらボーリング(退屈)ないよ。あなた仕事してても大丈夫よ」と楽しいそうに話し、数あるタイトルの中からジャッキーチェンの映画を選んだ。

翌朝、やはりモナは早起きだった。
寝たのは明け方近かったのに、8時には台所で何かをしながらガチャガチャと音を立てていた。
どうやら朝食を作っているらしい。

モナのささやかな夢はたくさんあった。
それは一緒にモーニングコーヒーを飲む、僕のために朝食を作り二人一緒に食べる、スーパーに二人で食料品の買い物に行く、親子3人一緒に遊園地に行く。

出かけるときは手をつなぐというのもあったが、それにはもう少し細かい注文があり、つなぐ手はお互いの指と指を交差させるように絡め合わせるというもので、モナは自分の両手でそれを再現しながら「ハンドシェークと違うからね」と説明していた。

もう少しゆっくり寝ていればいいのにと思いながらも、僕は眠気の覚めやらぬベッドの上で「それが夢だから仕方がないか・・どんなものがでることやら」と声をかけずに見守ることにした。

僕はモナの夢が、全て幸せな家庭をイメージするものばかりであることに気が付いていた。
彼女は最初の恋人に妊娠後に捨てられた辛い過去があり、きっと全てそこからきている夢なのではないかと思っていた。
彼女は常々、お金はいっぱいなくてもいいから、家族で幸せに暮らしたいと話していた。
自分の両親の様に、いつまでも仲良く暮らせたらいいと。
しかし今の彼女の現実は、子供はいるが旦那がいない。
自分が幸せになるためには大切なものがひとつ欠落しているのだ。
自分のためにも子供のためにも、彼女は僕にそれを強く求めている。
彼女が僕に求めているものは、最初から明確だったのだとあらためて感じていた。

しかし彼女の夢の一つである「指を絡めて手をつなぐ」ことだけは拒否した。
街中でそれをするのはどうにも照れくさかったのだ。
「マハルは私と一緒に歩くのはずかしいか?ふん!」
「いや、そうじゃなくてね、この年になるとそんなことは恥ずかしくてしょうがないのよ」
「だから私と一緒がはずかしいってことでしょ!」
「いやちがうんだけど・・でもはずかしいっていうかなんていうか・・」
「ふん!」
こんな具合であったから、フィリピンにいる時にはしっかりとその夢を叶えてあげた。

彼女が用意した朝食に、僕が挽きたての豆で入れたコーヒーを添えた。
オレンジジュースもグラスに入って出てきた。
「あっ、野菜がなかったね。アコ買うの忘れちゃった。」
と言いながらも、僕が美味しいよといって食べている姿に彼女はとてもご満悦だった。
そんなご満悦な彼女を見ている自分も幸せを感じていた。
トーストにハムエッグ、ウィンナーと、ありふれた内容ではあったが、確かに夢と呼ぶに値する朝食だと思った。


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エントリー:リン89 モナの夢
2009年06月28日

リン88 フィリピーナの愛

モナは僕がちょっときついことを言うとすぐにめそめそと泣く。
大体は今すぐ会いたい、今会いに来て欲しい、あなたの所へ行きたい・・と言われた時に、それは無理だと断る時である。
理由は忙しい、お金がない、明日は大事な仕事がある・・。
それが夜中の2時や3時の話であるから、普通に仕事を抱える人にはそれがかなりきついということを理解できないのかと思ってしまう。
もし理解できないとしたら、これから説明するから理解して欲しいと電話口で丁寧(なつもり)に言い聞かせるが、それでもモナがしつこく食い下がってくると、僕の口調が少し厳しくなってくる。
最後には「アコしつこい?アコわがまま?」とメソメソ状態になる。
そんな時には以前登場した、彼女の友達エレナが相談にのるらしい。
エレナはモナと同じ店で働く、日本でのモナが一番信頼できる親友だった。

そのエレナには加藤さん(仮名)という恋人がいた。
モナに言わせると、加藤さんは優しい、かっこいい、エレナを大切にしているとべた褒めだった。
エレナは本当に良い恋人に巡り合ったということらしい。
それは、「わたしははずれくじを引いてしまった」ということを言いたいのだろうか・・と疑ってしまうほどの褒めようだった。

確かに僕はそれほど良い恋人ではなかった。
セブにははっきりしない恋人がいて、お店には滅多に行かない、そして忙しくていつも相手ができるわけではない、更にモナに言わせると僕は彼女に会うための努力をしない。
モナがメソメソした時に、「アコはあなたの努力が欲しいだけ・・それが見たいだけ」だと彼女に言われることがあった。
加藤さんと比較されると、僕は地を這うくらいダメな恋人だと言われても仕方がなかった。

エレナは自身の口で加藤さんを褒めちぎることはしないが、しかし彼女が加藤さんに心底惚れ抜いているのはよく伝わってきた。

二人が出会ったきっかけは、加藤さんが以前エレナの働いていたお店の客で、彼はエレナを指名していたというありふれたパターンである。
当時エレナはイミテーション結婚で来日し、それにかかったそれ相応の費用を借金として抱えながら働いていたらしい。
それらの事情を全て飲み込んだ上で、加藤さんはエレナの逃亡劇に荷担し、後始末もきちんとしてくれたそうだ。
なぜ逃亡の必要性があったのかは詳しくわからなかったが、話を聞く限りではその店がいやだったということらしかった。
いやだという理由だけでそんな大それたことをするのかと思ったが、まあそんなところだと言われたら、それ以上詳しい事情を根掘り葉掘りと聞くわけにもいかなかった。
加藤さんの後始末のおかげでパスポートは取り戻すことはできたが、結局VISAの延長はできず、エレナは不法滞在(オーバーステイ)となっていた。
そして正式な離婚手続きをしていなかったので、エレナは当時、書類上日本人の妻のままだった。

加藤さんは35歳で、どこかの大会社のエリート社員。月収は100万だとか・・。
それをエレナもモナも信じていた。
僕は大会社の35歳の社員が月収が100万はないだろうと思っていた。
日本の大会社の社員年収情報はほとんどが公開されているし、大会社ほど平準化されているからである。
つまり多い少ないは多少あったとしても、どんぐりの背競べで似たり寄ったりだということだ。
30歳そこそこで少なくとも年収1200万であれば、利益率がめちゃくちゃ高く、年収も高いことで有名な会社を一つだけ知っているが、しかしそこはボーナスが大きなウエィトを占めており、毎月100万をもらっているわけではない。
しかし僕は、彼女たちが信じているものを特に否定はしなかった。
所詮は他人事である。それはおかしいと目を吊り上げて忠告することはないと思っていた。
ただ話を聞いている限り、その加藤さんとは一体何者なのだろうと気にはなっていた。

エレナとモナの話によると、彼は仕事の付き合いで毎晩外へ飲みにでなければならないらしい。
「日本の会社はそれも仕事のうちなんでしょう・・大変よねぇ」とエレナに相槌を求められ、「う、うん、そんな人も世の中にはたくさんいるねぇ」となんとなく答えていた。
彼は酒豪で毎日相当酔っ払っているらしく、エレナは彼の体が心配だとこぼしていた。

彼がモナの店に来る時も既に酔っ払っていながら、それから更に大量の酒を飲むのだと、それが彼の唯一の欠点だと言わんばかりにエレナとモナ二人が口を揃えて教えてくれた。
そして時々連絡が取れなくなるが、その次の日には「酔っ払って寝てしまった、ごめん」と電話がくるそうである。
モナの話によると、二人は普段、一日に何回も電話で連絡を取り合いその度に熱いトークを交わしているとのことだった。
モナはそれを、うらやましいといつも僕に聞かせていた。

僕は彼がエンジニアと聞いていたので、毎日接待で飲みに行くという話しを変だと感じていた。
エンジニアは社内の飲み会も少ないくらいで、ほとんどは遅くまで残業をしているものだと思っていたからだ。
しかも接待・・・。エンジニアがなんで毎日接待なの?・・・ますます加藤さんに興味を持つようになった。

そして遂に、散々前情報を吹き込まれた加藤さんとの初体面をモナの店で果たしたのである。

彼は僕より先に店に入っており、エレナを指名して飲んでいた。
僕が店に行くとモナが、そこの人がいつも話している加藤さんよとすぐ前のソファーを指差して耳打ちしてきた。
エレナも僕のことを、彼がモナの恋人だと加藤さんに話しているらしく、僕はそこで加藤さんと軽く挨拶を交わしたのである。

彼は背が高くがっちりとした体系に堀の深い端正な顔立ちを備え、挨拶をした時の話し方や態度は、彼が知的な人物だということを僕に印象付けた。
物腰も柔らかく性格も良さそうで、外観と中身が揃った稀に見るパーフェクトに近い人物かもしれないと思ったのである。
モナが「どお?加藤さんかっこいいでしょ?」と聞いてきたので、「エレナが好きになるのもわかる気がするよ」と答えたくらいであった。

そのうち加藤さん、エレナ、モナ、そして僕の4人で一緒に食事をする話が持ち上がった。
もちろんそれはモナとエレナが二人で勝手に決めたことだった。
その時に彼が同業だと思っていた僕は、簡単に自分の仕事の内容を話した。
しかし彼は自分の会社名も仕事の内容も詳細を語らず、半導体関係の仕事をしていることだけを言い後は口をつぐんでしまった。
どちらかというと避けたい話題のような素振りさえあり、食事の時に仕事の話をするのも気が引けた僕はその話題を早々に切替えた。
しかし彼は食事の間、結局自分のことを何も語ろうとしなかったのである。

自分の中には何か引っかかるものがあったが、しかしはっきりしないことを堂々と口にすることはできなかった。
ただモナにだけは、エレナには言わないで欲しいと前振りをした上で、彼は少し変だと思うと打ち明けていた。
しかしモナはそんなことはないと言い、自分も何かの確証があったわけではないので、それ以上そのことで意味のない議論をすることはなかった。


話は前後するが、僕とモナは横浜で楽しい思い出を作ったあとに、ある事件がきっかけで別れてしまう。
それはモナが自ら引き起こした事件で、その時のモナの落ち込みようは言葉では言い尽くせないほどひどいものだった。

それに引き換えエレナと加藤さんは順調に事が運び、二人はとうとう結婚することになったのである。
僕はその話を聞いた時に、以前変だと思っていた加藤さんへの想いは自分の思い過ごしであったのかと思った。
おめでたい話に不謹慎ではあったが、僕はそれを聞いた時に正直意外だと思ったのである。

結局一度だけ一緒に食事をした2組のカップルは、その後まるでオセロの白と黒のこまのように明暗がくっきりと浮かび上がった正反対の道を歩むことになったのだと、当時の僕は自嘲気味に独りつぶやいていた。

エレナは彼と結婚の約束をし、その手続きを進めるためにフィリピンへ帰国した。
帰国する際、加藤さんは書類上のエレナの夫と話をつけ離婚を成立させ、また入管にエレナを連れて行きオーバーステイであることを告げ彼女の帰国手続きをとったのである。
帰国後に加藤さんと結婚をすれば、再び堂々と日本へ舞い戻ることができると思っていたエレナは、喜んでフィリピンへ帰国し加藤さんの来比を心待ちに待っていた。


その頃僕とモナは寄りを戻し、エレナと加藤さんの幸せな姿を追いかけるように結婚の約束をするに至った。
しかし僕とモナが、ようやく長く悶々とした生活に決着をつけようと決意した頃、二人は号泣するエレナから毎日のように電話をもらうことになったのである。

加藤さんの来比の予定がずるずると延びていることは聞いていたが、突然加藤さんと連絡が取れなくなったという話しであった。
連絡が取れなくなってから5日目にエレナが騒ぎ出した。
その頃はまだ5日だけではないかとモナは鼻で笑っていたが、それに対して僕は横浜で感じたあのいやな予感が再び脳裏をよぎっていた。

エレナはそれから気が狂ったように僕やモナ、そして日本にいる友達に連絡を取り、加藤さんが自分に連絡をしてくれるよう彼にお願いしてくれと頼んできた。
あの冷静で大人だったエレナの180度変わり果てた有様に、僕とモナも驚きを隠せず狼狽さえしていた。

僕とモナは、他人の色恋沙汰に干渉できる範囲は限られているということで意見が一致していたが、エレナの死にたい攻撃に耐えかねて僕が渋々彼に連絡を取ることになった。

しかし予想通り僕のメールや電話はことごとく無視され、仕方なくエレンから教わった彼の職場に電話を入れたが、それも居留守ではないかと思われる扱いを受けた。
彼の会社は外資系の上場会社で、以前僕も客として取引きしたことがあるよく知った会社だった。
退職した会社の名前を使い彼を呼び出そうと思えばできたが、僕は学生時代の友人の振りをして、彼と連絡がつかなくなり心配しているが彼は元気にしているかと尋ねるに留めた。
電話に出た女性は、加藤さんは元気に出社し仕事をしていると教えてくれた。
僕はそのことを、加藤さんの安否を心底心配しているエレナに伝えたのである。

それから2日後、僕のメールや電話が功を奏したのかエレナに加藤さんから電話が入った。
彼は色々問題があり連絡が取れなかったことを謝っていたらしいが、エレナに言わせるとその態度は冷たかったそうである。
そしてまた連絡がぱたりと途絶えた。

それからその繰り返しが5ヶ月間も続き、エレナの電話攻撃は僕とモナに昼夜問わずに続けられた。
不安と淋しさに襲われているエレナは、とにかく誰かと話しがしたくて仕方がない様子だった。

なぜ彼は変わってしまったのか、もしかしたら新しい女ができたのではないか、自分はもう生きてはいけない、彼のことは一生忘れることができない、何とかして日本へ行きたい・・。
そして彼女は、加藤さんに連絡を取り真意を聞き出して欲しいと懇願してくる。
何べん電話で話をしてもその内容は同じことの繰り返しだった。
僕はその度に、僕から彼に電話をするのは筋ではないと断わった。
そして弱気になっているエレナを励まし、もう少し頑張るという約束を取り付け電話を切るが、次の日には元の木阿弥で弱わりに弱りきっているエレナから再び同じ内容で電話をもらう。


僕はモナとの結婚を決意してからすぐに、フィリピンの彼女の両親のもとへ挨拶に行った。
その時もエレナは二人が泊まるマニラのホテルへ来て、加藤さんに対する切実な想いを懇々と二人に話していった。
そして僕とモナのことを羨ましいと、ポツリともらすのだった。

彼女はもともと痩せ型の体型だったが、ますます痩せてやつれた姿は哀れでかわいそうだった。
最近ようやく落ち着いてきたエレナは、今は加藤さんの口からはっきりしたことを聞きたいだけだと話しているが、しかし曖昧になっている1%の可能性だけを頼りに生きているかもしれないという危うさも感じられる。


そして僕は、まさにオセロの白と黒の数が瀬戸際で逆転したようなこの現実に、先行きどうなるかわからない人生の機微を感じてしまい仕方がないのだった。
更には今も尚、フィリピーナの人を愛する強さというものを、モナやリン、そしてエレナを通して思い知らされているのである。

僕とモナの結末については既に紹介した通りであるが、どうしてそうなったのか、リンはどうなったかについては、また少しずつ展開していきたい。

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