フィリピーナと共に
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2009年07月15日

リン105 マニラ初日

僕とモナの部屋はリビングとベッドルームが区切られた2ルームタイプだったので、夕食までの時間をそのリビングで4人一緒に過ごすことにした。
その日の夜は佐伯さんと合流し食事を共にする約束をしていた。
佐伯さんにはすぐに電話をし、無事マニラのホテルに到着したこと、そして7時にホテルへ向かいに行くことを彼に告げた。

ヘイセルは川口さんのお土産のデジタルカメラをことのほか喜んで、さっそく使い方を川口さんに聞いていた。
無理に話題など作らなくても、それを買っていったら絶対にそうなると思っていた通りの展開だった。
ヘイセルは日本語が話せないし川口さんは英語が話せないが、カメラの使い方くらいは身振り手振りで何とかコミュニケーションがとれる。
二人とも人見知りすることなく、カメラを挟んで勝手に二人の世界を作っていた。

まもなくして、エレナもそこへやってきた。彼女が来ることはモナから事前に聞いていた。
久しぶりに見た彼女は、以前からやせ気味の体が加藤さんとのことで更に痩せ、かなりやつれているように見えた。
彼女は来るなり加藤さんのことを話し始め、それがとまらない状況になった。

加藤さんと最後に連絡を取ったのは○月○で、それまではどんな話をしていて、特に喧嘩はしていないが○月○日のメールまで連絡が途絶え、その後にこちらからメールや電話をいくらしても返事がなくなり、自分は1日50回も彼の携帯の電話を鳴らしたが、全くのノーレスポンスで、会社に電話をしたら席にいないと言われて、日本にいる友達の誰と誰と誰に、加藤さんと連絡を取ってみてくれとお願いし・・・。

彼女のやっていることは、僕にはめちゃくちゃに聞こえた。
なぜ二人の話をあちこちにいる他人にばらさなければならないのだろうか、そしてしつこく彼の携帯を鳴らすことや、会社に電話を入れることが逆効果であることがわからないのか。
延々と続く彼女の話に、僕とモナは閉口気味だった。
時として人は、自分の恋がおかしくなった時に大騒ぎをしたくなる。
それを理解しながら聞いていても、疲れた体に彼女の話が辛くなってきた。

それにその話を聞いていても、僕は何の助言もできなければ具体的な手助けもできない。
彼女の主旨は、僕に加藤さんへ電話して欲しいということであるが、第3者の自分が加藤さんへ電話をして何を話せというのだろうか。
エレナに対する裏切りについて説教しろとでもいうのだろうか。
それこそ願い下げであった。他人の色恋沙汰に首を突っ込むことほど愚かなことはない。
僕が加藤さんにお願いすることで彼の気持ちが変わると思っているならば、それは大きな勘違いだ。
それはモナも同意見だった。
二人のことは自分たちにはわからないことがたくさんあるのだから、私たちから加藤さんには何も言えないとモナが言った。

そもそも僕とモナは、久しぶりの再会で話がしたいのだ。
適当な頃合を見計らってシャワーをしたいと切り出し、僕とモナは隣のベッドルームへ逃げ込んだ。

モナはベッドルームに入るなり、部屋の鍵を音がでないように細心の注意を払いながらソーとかけた。
ベッドルームにはバスルームがあり、その広さは10畳はありそうなほど広かった。
二人は裸で抱き合いながらシャワーを浴び、その後服を着ずにそのままベッドに移動した。

僕が目覚めたのは夕方の6時だった。
徹夜の疲れがまだ残っていたのか、僕はいつの間にか眠っていた。
川口さんは彼が全く理解できないはずの英語のテレビを真剣に見ており、ヘイセルはまだカメラをいじっていた。
エレナは相変わらずモナを捕まえて、加藤さんの話をしている。

「いやぁ〜すみません。ついつい寝てしまいましたぁ」
と川口さんに声をかけながらリビングに戻ると、窓越しにマニラの空が夕焼けでオレンジ色に染まっているのが見えた。

大都会と綺麗な夕焼けの組み合わせは、ミスマッチが作り出した不思議な世界だった。
晴れた空にオレンジに染まった大きな雲が点在しているその光景は、海外ならではのものである。
僕は写真を撮るためにベランダに出た。
ベランダに出た瞬間蒸し暑い空気が襲い掛かってくるかのように僕の体を囲み、部屋の中が如何に良く冷房が効いていたのかがわかった。
10分程の撮影で、体に再び汗が滲んできた。

そろそろ佐伯さんを迎えに行くために、ホテルを出る時間である。
5人は車でロビンソン近くのホテルで佐伯さんとその彼女アヤさんを拾った後、そこからそれほど遠くないハーバービューというシーフードレストランへ行った。

ハーバービューはアメリカ大使館のすぐ脇にあり、海の上にせり出す桟橋の上が客席になっている。
間違って特大のロブスターなどの高級食材を注文しなければ価格はリーズナブルで、日本人でも美味しく食べることができる有名レストランであった。
以前の記事でも紹介したように、僕はお客さんの接待でもこのレストランを良く使っていた。
食卓にはエレナを含めた我々5人、ドライバーとその娘、そして佐伯さんとその連れのアヤさんの総勢9名が並んだ。

佐伯さんの恋人アヤさんは、かつて日本のフィリピンパブで働いていたので日本語を話すことができた。
そしてドライバーの娘も日本留学経験があり日本語がわかる。
会話は必然的に、ほとんどが日本語プラス若干の英語となった。
ヘイセルはタガログと英語しか知らないので、彼女の通訳を僕とモナで務めた。

佐伯さんがフィリピンに住んでいる女性に毎月送金をしていることは周囲の噂で聞いていたが、そのアヤさんに会うのは初めてだった。
例の中華レストランによく集まる佐伯さんの友達は、この佐伯さんの送金について常々「お前は騙されている、馬鹿だ、早く送金など止めろ」と言っていた。
そんなことも念頭に置きながら僕はアヤさんの言動を注目していたが、彼女は人を騙して送金させるような女性にはとても見えなかった。

35歳のアヤさんは年相応に落ち着いた雰囲気を持つまじめそうな女性で、初対面のメンバー全員にもすぐになじんだ。
佐伯さんが来比してからの二人の過ごし方をアヤさんに聞いてみたところ、ホテルの部屋で朝からビールを飲みだらだらし、たまに近くのロビンソンに散歩に出かけてはそこでもビールを飲むという毎日が繰り返されているらしい。
特に二人でどこかへ観光をしに行くわけでもなく本当に毎日それだけだと、少し寂しさと諦めの表情を見せながら教えてくれた。

二人がどの程度の期間付き合ってきたのかは知らなかったが、アヤさんはどうやら佐伯さんが日本で遊びまわっていることを知っているようだった。
佐伯さんは遊び人なので、いついなくなるかわからない人だから自分は本気で彼を当てにしていないという意味の話を、こっそり教えてくれた。
その横では佐伯さんが、相変わらずビールをがぶ飲みしながら無邪気に騒いでいる。
自分の連れであるアヤさんを気づかう様子もなく、マイペースな彼を横目で見ながらその話を聞いていると、僕はアヤさんの気持ちが分かるような気がした。
佐伯さんはお金を送金するだけで、それ以外の気づかいや思いやりみたいなものが欠けているように思えるのだった。
その一つの証拠に、日本では頻繁にフィリピンパブに通い、別の女性を一生懸命追いかけている。
アヤさんはその全てを見抜いているような節があった。

それでも毎月お金をもらい、最初は彼に幸せをたくさんもらったし感謝もしているから、佐伯さんがフィリピンにくる時にはこうして付き合っているといった意味の話をしていた。
あまり佐伯さんに聞かせたくない箇所は、アヤさんは英語を混ぜて話した。
かつては彼の遊びを止めて欲しいと願っていたが、今の私にはそれをやめさせる魅力はないという言葉が印象的だった。

佐伯さんは英語は全くだめであったが、しかしそれがもし日本語だったとしても、酔っ払い騒いでいる彼にはおそらく聞こえなかっただろう。
時にはモナと、そのことについてタガログ語で話していた。
後ほどモナは、アヤさんが佐伯さんをあまり信用していないようだと教えてくれた。
日本では佐伯さんがアヤさんに騙されているということを聞かされていたが、実際の事情は少し違うのではないかと薄々感じた。

その翌日は、モナがどこかの川でボートに乗るレジャーを企画してくれていた。
僕とモナは、せっかく車をチャーターしているのだから佐伯さんとアヤさんも一緒にどうですかと誘ってみたが、彼は面倒くさいからおそらく行かない、気が変わったら明日連絡すると言った。
その横にいたアヤさんは寂しそうな顔で、せっかく誘ってくれたのにごめんなさいと謝っていた。
アヤさんはきっと一緒に行きたかったのではないだろうかと思ったが、それ以上二人に無理強いすることはできず、その日は彼らとそのまま別れた。

エレナはそこからバスターミナルに行き自宅へ帰った。
佐伯さんとアヤさんをホテルに送り届けた後、ヘイセルをアパートに送り、僕とモナ、川口さんがホテルへと戻った。
翌日はホテルを出発する時間が早かったので、川口さんも早々に自分の部屋へ戻り、ようやく長い初日が終了した。

モナと久しぶりの再会を喜び合うゆとりもないほど気疲れの多い1日に、二人はゆっくり語り合うこともせず、いつの間にか眠りについていた。

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リン104 入国時のハプニング

この記事は以前抜け落ちていたものです。途中で話が飛んでいることに気付き7月17日にアップしました。#104の話ですので、そのつもりでお読み下さい。申し訳ありませんでした。その後の話はナンバーを振り直しました。
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フィリピン渡航前に緊急の仕事が飛び込んできたため、フライト当日は徹夜明けで成田行きのバスに乗るはめになった。
朝4:30にマンション前にタクシーを呼び、途中で川口さんを拾いながらパスターミナルへ向かった。
川口さんはヘイセルにお土産として買ったデジタルカメラが入った小さなボストンバッグを一つだけ持って、予定通りあらかじめ決めていた場所に現れた。
川口さんの考えられないほどの軽装にくらべ、僕のキャリーバッグにはモナの家族に贈るお土産がぎっしりと詰まっていた。
彼女の両親、ベル、ベルのいとこ、モナのいとこ、モナの弟二人、そしてヘイセルへとそれぞれ個別に土産を買ったが、川口さんはそれを見て、家族が多いと大変だと驚いていた。
モナにはマニラで指輪を買う約束をしていたので、日本で土産は買わなかった。
成田行きのリムジンバスは快調に高速を進み、定刻通りに成田空港へ到着した。

平日の成田空港はがらんとしていて空いていた。
チェックインは問題なく済んだが、出国時に川口さんがヘアリキットと歯磨き粉を没収された。
彼が液体製品を持っていることを知っていれば自分の預かりバッグに入れたのだが、後の祭りであった。
川口さんには事前に、液体製品は機内持ち込み不可であることを告げていたのだが、川口さんがどうせ厳密に検査されないだろうと甘く考えていたらしい。
本当に没収されて彼は驚いていた。

いよいよ飛行機に搭乗すると、フィリピン行きの実感が湧いてきた。
フィリピンエアラインの機内は、意外と混んでいてほぼ満席のようだった。
若いフィリピーナの姿もちらほらと見えたし、怪しいおじさん軍団もいた。
飛行機が定刻通りに離陸すると、いつの間にか僕は深い眠りに入ったようだった。
食事が運ばれてきたときに川口さんが起こしてくれたが、食事が済んでからまたすぐに眠りについた。
本格的に起床したのは、飛行機がフィリピン上空にさしかかってからだった。
ほとんど機内で寝ていたことになる。

最初はフィリピンのどこを飛んでいるのか分からなかったが、窓際に座っている川口さんの方へ身を乗り出して窓越しに下を見ると、どうもラグナの湖の近くを飛んでいるようだった。
飛行機は一旦マニラ近くの上空を通り過ぎ、どこかで旋回してからマニラに着陸態勢をとっているようである。
機体が高度を下げると、フィリピン特有のバラック小屋のような家が川沿いに並んでいるのが見え始めた。
その家を見ると、フィリピンを頻繁に襲う台風によくあの家が耐えていると、いつも主ってしまう。
懐かしさを感じるフィリピンの風景に、いよいよ胸が高鳴った。
着陸して空港内に入ると、以前訪れた時に見た建物内の風景が変わっていることに気付いたが、まさか新しいビルディングになっているとは思わず、それは空港の外にでるまで全く気付かなかった。

入管のブースにたどり着いた時には、既に入国手続きの人が何列にもなって並んでいたので、僕と川口さんは別々の列に並んだ。
入国手続きはいつものように簡単に済んだ・・と思っていたが、川口さんが入管ブースから中々開放されない。
僕はその様子をみながら川口さんを待っていたが、ブースの担当者が突然電話をかけ始めた。
ん?と思った次の瞬間、数人の男が入管ブース脇の部屋から出てきて、川口さんを取り囲んだ。
僕はすぐに駆け寄り事情を聞こうとしたが、一人の男が僕に
「お前も日本に帰りたいのか!」
と高飛車な態度で言ってきた。
(お前・・・も?「も」ってことは川口さんは日本に帰るってこと?何があった?)

川口さんは男たちが出てきた部屋に連れ込まれてしまった。
僕もついていきたかったが、担当官の態度が無関係の人間はでしゃばるなと言っていた。
僕は部屋の外で待つしかなかった。
そのうち空港の外で待っているモナから携帯に電話が入った。
「もう着いてるよね。遅いなぁ、まだなの?」
「大変だよ。川口さんが逮捕されちゃった。つかまったよ、イミグレーションに・・」
「はあ?なんで?彼はどこなの?」
「イミグレーションブースの横にある部屋に連れて行かれた。今待ってる。もう少しそこで待っててくれる?」

5分ほどしてからさっきの高飛車な態度を見せた担当官が、ドアから出てきて僕を手招きした。
部屋に入ってみると、川口さんは何を話しているのかさっぱりわからないと言ってきた。
担当官が僕に聞いてくる。
「お前は英語は大丈夫か?」
「大丈夫、問題ないです」
「彼はフィリピンに来たのは初めてか?」
「勿論初めてですよ」
「本当?本当に初めてか?」
「イエス!本当に初めてですよ。なんでそんなことを聞くの?」
「彼のパスポートはOld Pasportだ」
「Old?あなたはO・L・DのOldって言ってますか?」
「イエス、そうだ。これは古いパスポートだ」
「なぜそんなことを言うのですか?古いパスポートで日本を出国できるはずがないでしょう。日本の出国スタンプがあるでしょ、そのパスポートに・・」
「彼は以前フィリピンに入国した記録が残っている。しかしこのパスポートにはその時のスタンプがない。だから古いパスポートだ。」

正確には、彼のパスポートナンバーが過去の入国記録に残っていると話していた。
話が飲み込めなかった。とにかく僕は
「古いパスポートでは日本を出国できるはずがない。それはカレントパスポートだ。
間違いない。そして彼はフィリピンに来たのは初めてだ。それも間違いない。」
ということを訴えるしかなかった。
担当官は再び「本当に初めてか」と聞いてきたので、僕は相手の目を見据えて「初めてだ」ときっぱり答えた。
そこで担当官が「お前は初めてじゃないだろう」と言ってきたので、「僕は何回も来ているよ」と答えたら、担当官が一瞬にやりとして、ようやく川口さんを解放してくれた。

大騒ぎをした割には、その後何かを調べるわけでもなく、その問答だけで相手は簡単に幕を引いた。
合点がいかないやり取りだったが、もしかしたら金目当てにいちゃもんをつけられたのではないかという気がしていた。
そんな想いが頭に浮かんだ僕は、彼とやり取りをしている最中に、ボスを呼べと言いそうになっていた。
以前手荷物でいちゃもんをつけられた時に、明らかに金目当てであることがわかったのでボスを呼べと息巻いたことがある。
それを口にした途端、簡単に無罪放免になったことがあった。
それでもだめであれば、日本大使館に連絡を取り、フィリピンサイドが間違いだと分かった時にはお前が責任を取ることになるぞと脅す作戦も考えていた。
同時に以前イミグレーションで働いていたモナに、彼女の知り合いに連絡を取ってもらう方法も考えていた。
とにかくやましいことは一切なかったので、徹底的に闘う気になっていた矢先のあっけない幕切れに、拍子抜けした。
彼らはよしんば罰金でもとって自分たちの懐にでも入れようと思っていたのだろうか?
川口さんは何が起こっているのかと終始ぽかんとしていたが、早くもフィリピンは怖い国だと漏らしていた。
とにかく多少寄り道をしながらも、二人揃って無事にフィリピン入国を果たした。

空港の外ではモナとヘイセルが二人で待っていた。
ヘイセルはその時のために、2日間の休暇を取ってくれていた。
彼女は普段、大手コンピューターメーカーのコールセンターで働いている。
モナはいつもより化粧が濃いようで、気合を入れて再会に臨んでくれたことがすぐにわかった。
それにしても空港の外は暑かった。いきなり体中に汗が染み出している。
川口さんとヘイセルをお互いに紹介している間に、モナが手配していた車が目の前に滑り込んできた。
ホテルへ向かう車の中では、入国時のハプニングの話で4人が盛り上がった。
詳しい状況を知ったモナにも、そのやり取りが何だったの見当が付かないようだった。

川口さんは初めてのフィリピンを目の当たりにして、その都会ぶりに驚いていた。
「道路が大きいね、車がこんなにいっぱい走ってるとは思わなかったよ。おっ、ビルもいっぱいある」などと話している川口さんが、フィリピンをどのように想像していたのか大体分かった。
僕が初めてこの国に来た時と同様、そこが相当遅れた国だと思っていたに違いない。
しかしマニラは立派な大都会である。
車の渋滞だけであれば、東京をしのぐほどであった。
景色を眺めているうちに、マニラの地図が頭の中に蘇ってきた。
そして向こう約一ヶ月間フィリピンでのんびり過ごせることを考えると、僕の心は開放感に満ち溢れていた。

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2009年07月14日

リン103 フィリピン渡航計画

年が明け、僕がフィリピンに行く具体的な話がモナとの間で始まっていた。
僕はその時、どうせフィリピンに行くのであれば友人の川口さんをフィリピンに連れていこうと思っていた。

川口さんは55歳の独身男性で離婚暦ありの会社員だった。
彼の海外渡航経験は、5年前の韓国旅行が一度だけ。
日本ではフィリピンパブには一度も足を踏み入れたことのない、フィリピンとは全く無縁だった人物である。

ただし一度だけ、川口さんの友人でフィリピーナを妻に持つ井沢さんから日本在住の35歳のフィリピーナを紹介され、見合いをしたことがある。
見合いといっても普段友達連中が集まる中華レストランでざっくばらんに食事をするだけのものであったが、川口さんは僕にその付き添いを求めてきた。
そして当日、僕と川口さんが先に店に入り見合い相手を待っていた。

店の外にフィリピン人らしい女性を見た瞬間、川口さんが発した言葉が「モアイ像が来た」であった。
なぜモアイ像なのか僕にはその時ピンとこなかったが、川口さんにはどうしても彼女がモアイ像に見えるらしかった。

モアイ像呼ばわりされた彼女は、35歳独身の結婚歴無しという、太目のきつい顔をしたおばさんだったが、川口さんの第一印象はかなり悪そうだということが察せられた。

僕とは初対面だった紹介者の井沢さんも、妻の若いフィリピーナと小さな子供を二人連れて現れた。
その後に川口さんの見合いを一目見学しようと、かねてから噂に聞いていた井沢さんの友達であるフィリピンフリーク達がぞくぞく集結してきた。
川口さんはそのフィリピンフリーク集団とも顔見知りのようだったが、僕は全員初対面だった。
どうもその中華レストランは、マスターも含めてフィリピンフリークの溜まり場になっているようだった。

彼らはそれぞれが個性的で、話をしていて楽しいメンバーだった。
美容師をしている独身50歳の佐伯さん、美容室を経営してる妻帯者52歳の古池さん、トラック運転手でフィリピーナの妻と子供を持つ54歳の井沢さん、中華料理屋経営で妻帯者52歳のマスター、新聞販売店経営でそれ以外は正体不明の東郷さん、48歳独身日雇い労働者で茶髪にピアスのボテキさん(あだ名のボテキしか知りません)。
全員が何らかの形でフィリピンにはまっている連中だったが、、川口さんだけはそのメンバーに囲まれながらも、それまでフィリピンパブのお誘いもフィリピン旅行も全て断り一線を画してきたようだった。


主役の川口さんはモアイさん(本当の名前はすっかり忘れてしまった・・)の隣に席を用意され二人並んで座ったが、案の定食事中に川口さんの会話が全く弾まず、いつの間にか僕がそのモアイさんのお相手をするようになっていた。

彼女は井沢さんの奥さんが働いている会社の職場友達であった。
モアイさんと井沢さんの奥さん二人は、小さな会社の工場でライン作業をしているとのことだった。

モアイさんにはフィリピーナ特有の陽気さがなく、どちらかというと神経質そうで会話に柔軟性が感じられない。
モアイさんは少し話をするとすぐに糞詰まり状態になり、突然井沢さんの子供をあやしたり、井沢さんの奥さんとタガログ語で話し始めるなどの場つなぎ的な行動を繰り返すため、会話が全く盛り上がらなかった。

僕は差し障りの無い世間話に混ぜながら、彼女の入国の経緯やフィリピンの家族の状況などを確認した。
VISAはどうなっているかという質問に、モアイさんは一瞬身を硬くしてすぐには答えなかった。
彼女ははっきり言わないものの、どうもファミリーVISAで入国してから何年もの不法滞在を経て現在に至っているらしかった。
そして彼女の日本のファミリーが日本のどこで何をしているのかも答えたくない様子だった。
日本には最初から働く目的で来たらしく、フィリピンの家は裕福だという話と矛盾していることも気になった。

彼女の身辺がどうもすっきりせず、気になる点が多いことを見合いが終わってから川口さんに伝えたが、彼はそれ以前に、なぜモアイなんだと周囲の友人たちに文句を言っていた。
勿論それは見合い相手のモアイさんがいなくなってからである。

周囲の人間はそんな文句を言える身分かと川口さんを総攻撃していたが、「それじゃあなた方があの人を紹介されたら、付き合ってみる?」という川口さんの言葉に、そこに駆けつけた友人全員が、首を横に振った。
川口さん自身は鼻息が荒く、ただ単に人を見世物にしたかっただけだろうと息巻いていたし、勿論彼女に対してときめく気持ちもない様だったので、その話は流したほうがいいだろうというのが僕の考えだった。
川口さんは本当に怒っていたわけではなかったが、彼が本気で見合いに期待していたにも関わらず、周囲がひやかし半分だった様子にがっかりしていた。

川口さんは笑顔の優しい、人のよいおじさんである。
長い一人暮らしに寂しさを感じているらしく、僕にだけはその胸の内をこっそりと話してくれていた。
相手は日本人でも誰でも良かったが、良い人がいれば本気で再婚を考えたいと話していた。

川口さんは僕の部屋で、スカイプで繋がったモナと数回話しをしていたので、彼女のことを良く知っていた。
モナと話をするようになってから、それまで縁もゆかりもなかったフィリピーナが自分の結婚対象に加わり、それがその見合いの発端だったらしい。
しかしその見合い以来、フィリピンにはモアイがたくさんいるというのが川口さんの口癖になってしまった。

そんないきさつがあり、川口さんとヘイセルを会わせてみようかとモナと話していた。
ヘイセルは長い間恋焦がれていた相手をようやく諦め、やはり寂しさを感じているようだった。
ヘイセルはモナと同じ大学に通い、モナは劇団に入ってから彼女と知り合った。

僕は現地で何度かヘイセルと会っており、彼女が自分を犠牲にしてまでも他人に気を使うような優しい女性であることをよく知っていたし、モナも川口さんの人柄を気に入っていたので、2人のフィーリングさえ合うのであればどうだろうかという話であった。
そして僕には、川口さんのモアイ誤解説をきちんと解消してもらいたいという気持ちもあった。

僕もモナも、無理やり川口さんとヘイセルをくっつけようなどと言う気持ちは全くなく、4人でフィリピン観光を楽しもうという程度でそれを企画した。
幸い川口さんもフィリピン行きの話に興味を示したので、とりあえず数日間一緒に遊ぶという感覚で一緒にフィリピンに行く話しがまとまった。

川口さんは仕事の都合上3日間だけの滞在しかできなかったので、最初の3日間はマニラに宿泊、そして川口さんが帰国してから僕とモナは初めて一緒の旅行をし、それから彼女の両親へ挨拶するためにモナの田舎に行くというを計画を二人で相談し決めた。

モナには対してはそれまで何もしてあげていないという気持ちが自分の中にあり、二人の旅行の行き先は彼女のリクエストで決めようと思っていた。
彼女の希望は、プーケット島かもしくはミンダナオのパールファームビーチということだったが、フィリピンから海外へ出るのはあわただしくなりそうだったので、ミンダナオのパールファームビーチに行くことを決めた。

ところがそこは人気のリゾート地で、アゴーダのような大手のサイトで予約しようとしても取ることができず、マニラの旅行代理店を直接動かしてみたがそれでも取れなかった。

いい加減だと思ったのは、代理店の担当者がパールファームの社長に直接お願いしてもだめだったという回答を持ってきて別のリゾートを薦めたのだが、その後僕が直接ホテルに予約を入れてみたらすぐに取れてしまったことだった。
取れないという事実は本当だったかもしれないが、もし彼が本当に社長に直談判したら絶対に予約が取れる状況だったので、明らかに社長への直談判は嘘だと思われた。
顧客の信用・信頼というものをまったくおざなりにしているフィリピン人が多くいることは、本当に残念なことであった。

既にパールファームを諦めていたモナは、僕の情報に喜んだ。
サイト上で書き込みを探してみると、そこは欧米人が好んで訪れているリゾート地であることがわかった。
世界屈指のリゾート地の一つだと絶賛している書き込みもみつかり、否が応でも期待が高まった。
※ミンダナオのパールファームビーチリゾートは、このブログの写真カテゴリーで紹介しています。

2月に入るとようやく仕事に目処がつき、2月半ばからフィリピンに出かけることにした。
川口さんは英語が全く話せないので、出発日が近づくにつれ慣れないフィリピンに行くことを不安がっていた。
特に帰りが一人になることを恐れ、美容師をやっている佐伯さんもフィリピンに行こうと誘っていた。

佐伯さんは毎月5万円をマニラ近郊の街、キャビティに住む女性アヤに仕送りしている。
アヤが日本のフィリピンパブで働いている時に佐伯さんと知り合い、それから長く付き合っているようであったが、佐伯さんは日本にもはまっている女性がおり、いつもお金がないと言いながらその女性がいるフィリピンパブに通っているような人だった。
その佐伯さんも、川口さんの巧みな誘導によりフィリピンに行くことが決まった。
佐伯さんは、僕と川口さんより先にフィリピンに行き帰りを川口さんと同じ便にするよう日程を調整してくれた。

こうしてあわただしく旅程が決まっていく中で、突然自分のパスポートの有効期限が1ヶ月前に切れていたことに気付いた。
慌てて手続きをしたが、住所変更をしていなかったので役所巡りから始めることになった。
チケット手配、リムジンバス予約、フィリピンでのホテル予約と、ばたばたとフィリピン旅行の準備を進めた。
それら一つ一つを決める際、川口さんの意向を確認する必要があったために連れがいるということは意外に厄介であることを知った。

僕にとってその時のフィリピン旅行は、川口さんのエスコート、モナとの旅行、そしてモナの田舎に行き彼女の家族とのご対面と、楽しみもあれば不安もある旅行であった。

忙しい想いをしながらようやくフィリピン渡航当日になったが、フィリピン入国の際に想定外のハプニングに見舞われこの旅行がスタートすることになる。

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