フィリピーナと共に
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2009年07月13日

リン102 クリスマスプレゼント

11月にはモナの誕生日がある。
僕は彼女の誕生日をしっかりと覚えていたが、その誕生日にすら僕は彼女に連絡をとらなかった。
彼女は夜遅くまで、僕からの連絡を待っていたようだ。
モナから、夜遅くにメールが入った。

「今日は私の誕生日です。忘れてしまいましたか?誕生日のプレゼントとして、あなたの声が聞きたいし、メッセージだけでもいいから欲しい。ずっと待っています。」

そんなメールをもらい、僕の心は締め付けられるように苦しくなっていた。
しかしこちらが中途半端な態度を示したら、彼女はきっとなし崩し的に以前のようなコミュニケーションを積極的に再開しようとする。
僕はそんなものに惑わされることなく、自分の気持ちをじっくりと見つめ直す必要があったし、彼女にもじっくりと考えて欲しかった。

12月に入り、とうとう約束したクリスマスまで1ヶ月を切った。
彼女の連絡は誕生日以来ぱたりと途絶えていたが、僕は彼女の誕生日に味わった苦い想いを、自分の心の中に忘れずに持ち続けていた。
彼女に対する慕情は一向に薄れることはなかったが、それとは裏腹にモナからの連絡が途絶えていた。
いよいよ本格的に愛想をつかされたかと思い始めていた頃に、彼女からX’masCardが自宅へ届いた。

相変わらずの手作りカードは、シールやカラーペンで綺麗に装飾が施されており、いくつものメッセージが所狭しとカードの余白を埋めていた。
X’masCardと一緒に僕とモナが過去に撮った写真、そして彼女の娘ベルの学校での写真が20枚ほど同封されており、写真の裏には一枚一枚まるで写真が僕に語りかけるようなコメントが書かれていた。
モナはサイエンスを専攻したと言いながら、読書や絵を描いたり詩を作る、そしてオリジナルのノートブックを製作したりと、とにかくそんなものに取り組むのが大好きな女だった。
手紙やカード・写真には、そんなモナの性格が色濃く滲み出ていたし、それらからは彼女が僕と出会ってからずっと貫き通してくれた自分に対する想いが、十分すぎるほど感じられた。

彼女は僕のせいで散々辛い目に合っているというのに、ここまで相手に対する愛を貫き通せることを不思議にさえ思っていた。
思えば彼女と出会ってから、3年以上の月日が過ぎている。
彼女が最初に言った「あなたはアコの運命の人」という言葉が本物であることは、もはや疑いようがなかった。

この間、モナには言い寄ってくる男がいないわけではなかった。
それは日本人だったりフィリピン人だったりしたが、彼女はことごとくそれらをはねつけてきた。
その中の何人かは僕も知っているが、少なくともフィリピン人はきちんとした仕事を持ち、現地ではそれなりにステータスのある人間であった。
いっそ誰かと幸せになってくれた方が、僕の心の負担が減ると本気で思ったこともあったし、彼女にもそれを直接話したこともあった。
しかし彼女は一遍の迷いも見せずに、同じ気持ちをずっと持ち続けてくれた。
そんな彼女の気持ちにもはや疑いの余地はなかったし、彼女は僕の心の中に、まるで植物のそれのようにゆっくりと確実に根をはっていた。
その証拠に彼女に対する慕情は少しも薄れることはなく、今度は自分がその気持ちに本気で応えるべきだと思っていた。

12月も中旬になると街のあちらこちらで色とりどりの電飾が目立ち、クリスマスの雰囲気が濃厚になっていた。
ある日僕は仕事上のお客さんの忘年会に呼ばれ、新宿の某ビルに向かっていた。
東京は相変わらず人が多くせわしない。
何に追い立てまくられているのかわからないが、それぞれがわき目も触れず先を急ぐかのように歩いている。
京王プラザホテルの脇は通りの木々に豆電球の光が散りばめられ、高層ビル群を背景に美しくきらめく電飾の景色が創りだされていたが、それに足を止める人は一人もいなかった。

光のトンネルのような電飾景色、忘年会が開催されるビルの一階フロアーにある大きなクリスマスツリー、そして高層階から見下ろした新宿の夜景、僕はそれらをたくさん携帯で写真に収めた。
そして翌日、良く撮れている写真数枚を添えてモナにクリスマスの「Merry X’mas」とメッセージを送った。

予想通り彼女からはすぐにありがとうと返事が返ってきた。
それをきっかけに、スカイプで話をすることにした。
「久しぶりだね。クリスマスカードと写真をありがとう、届いたよ。」
「そう、よかった。アコあなたからもう連絡こないと思ってたよ。」
「なんで?約束したじゃない、クリスマスまでに返事するって」
「だってあなたアコの誕生日も何もないでしょ。アコずっと待ってたよ。何もないから1人で泣いてたよ。」
「そうか、誕生日は忘れていなかったけどね。自分の心がクリアになるまで、コンタクトしたくなかったから。」
「それで?クリアになったですか?」
「なったよ。もう一回あなたに戻ることを決めたけど、それであなたはいいの?」
「オッオー、もちろんオーケーよ。アコはそれ一番嬉しいよ。でもどうして?あなたはずっと連絡ないでしょ?アコのこと、あまり考えてないでしょ!」
「そんなことはないよ。ずっと考えてたよ。横浜で別れてからずっとね。」
「そうなの?アコもそうよ。横浜にまた行きたいなぁ。もしあなたが連絡ないだったら、アコ結婚して日本に行こうと思ってた。」
「はあ?誰と?またイミテーション?」
「違う、東京のおじさん」
「それでどうするの?東京のおじさんとの結婚はイミテーションにならないでしょ?」
「そうよ。だからアコ考えたよ、成田に着いたら逃げるって。」
「ばか!それできるわけないでしょ。もしそれやっても、成田からどうする?ここにこれないでしょ」
「タクシーで行けるでしょ。あなたのアドレスわかるだもん。」
「おまえ、それいくらかかると思う?大変だよ。」
「それ、あなた払うできるでしょ」
「払わないよ。大体ね、それで逃げたってだめだよ。そんなことしたら東京のおじさん、死んじゃうよ。」
「そうねぇ、それかわいそだな」
「あたりまえだよ。あなたそれ本当にやりそうだから怖いんだよなぁ。」
「あなたアコ怖い?怖くないでしょ!あなたいつも強いでしょ!」
「いや、いろいろ怖いよ。たばこは吸うなとか、アローワンス(小遣い)はこれだけとか、あれはだめ、これもだめって厳しそうでしょ!それに何するかわからないし。」
「たばこはあなたのからだのためでしょ。アコそんなに厳しくないよ。優しいでしょ。もうあなた怒ることしないよ、アコは。」
「そう・・・?」
「オッオー、でもアコにクリスマスプレゼント、ありがとね。アコは今日の話しが一番嬉しいプレゼントよ。本当にありがとう。」

この日は彼女の娘であるベルとも久しぶりに話をした。
昨年の暮れにこうして二人のコミュニケーションが再開した。
僕の心の中では、彼女と結婚する決意を持ってその会話に臨んでいた。
リンのことがはっきりした以上、彼女に対しても将来のことを含めて自分の態度を明確にしたかった。

一つ心配していることがあった。
それはモナの両親が、自分のことをどう思っているかだった。
彼女が僕のせいで何度も苦しい想いをし病院に運ばれたことを見ている彼女の両親が、自分を快く思っているはずがなかった。
僕が結婚を決意しても、彼女の両親に反対されるのではないかと思っていた。
両親や友達のヘイセルは僕のことを良く思っていないだろうねと聞いてみた。
モナは心配ない、問題ないと言うが、僕はそれが心配でならなかった。
とにかく年が明けて仕事がひと段落したら、フィリピンに行き彼女にプロポーズをしよう、そして両親に挨拶をしに行こうと心の内で決めていた。
できれば1ヶ月ほど現地で過ごし、彼女とじっくりと向き合いたいと思っていた。
モナにはそれを明確に伝えなかったが、それでもいつの間にかフィリピンで再会する話が二人の話題を占めるようになっていった。
ベルは学校の先生に僕を紹介するという話まで出始めていた。
モナの中でいっそう夢が膨らんでいくのが、会話の中から感じ取れた。

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2009年07月12日

リン101 モナの手紙

まもなくして、モナから自宅に国際郵便が届いた。
中を開けると、英文の本が4冊と音楽CDが8枚、OLAYというフェイスクリームが2個に小銭入れ一つ、それと手紙とバースディーカードが入っていた。
僕はそれを見て初めて、もうすぐ自分の誕生日だということに気付いた。
フェイスクリームは、乾燥肌の僕を気づかって送ってくれたものだった。

手作りのバースディーカードは、色とりどりの絵や彼女の想いで埋め尽くされていた。
僕は手紙を手にとって、それを読み始めた。

「誕生日おめでとう。あなたは私からの手紙や贈り物を期待していないことは知っているけれど、今私にできることはこれしかありません。
私は今、私があなたなしでは生きていけないことをあなたに知って欲しいのです。
私はあなたを忘れることができないし、もし忘れようとがんばったとしても、それがどれほど難しいかをよく知っています。
あなたはなぜ?と混乱しているでしょうね。
しかし私自身もそれに答えることができません。

私は今とてもひどい孤独感に襲われ、いつもあなたのことを考えています。
あなたが自分の人生をどのように突き進んでいるのか、健康状態はどうなのか、毎日忙しくスケジュールをこなしキャリアを積み上げているか、食事はきちんと取っているか、しっかり睡眠をとっているか、そんなことを毎日考えています。
私はあなたが私のことをきれいさっぱりと忘れてしまったのではないかと心配になります。
私は、自分があなたのそばにいて、眠りに落ちるまで抱き合って、私があなたの肩の上で眠ったあの頃が恋しくてたまりません。
あなたと一緒にいられない私の人生は、今空っぽになってしまいました。
あの事がなければ、私たちはグッドパートナーになれたかもしれないでしょうね。
私は未だに自分の気持ちを切り替えることができません。
私の人生は今、大切な人を失い意味のないものになってしまいました。
今の私に何かできることがあるのでしょうか?
私は今、とても深い悲しみの中にいます。
私は悪い恋人だったのでしょうか?。私はあなたにアンフェアだったのでしょうか?そして私はあなたを傷つけでしまったのでしょうか?とても悲しいです。

もう一度やり直せるチャンスを与えてはもらえないのでしょうか?
もしもう一度チャンスをもらえるのであれば、おそらく二人の関係は前よりもっと良くなるし、前にも増して愛も大きくなると信じています。
それは私たちが以前犯した間違いで、多くのことを学んでいるからです。
二人の関係にとって何が大切なのか、今ならよりわかっているし、そして同じ間違いはもう繰り返すことはないはずです。

今二人の間には、二人の心を繋げるコミュニケーションすらありません。
それが再び二人が信じあう一歩になるのであれば、私にとってそれはとても重要な意味を持つのです。
しかしあなたが今私と同じような気持ちを持っていないならば、私が話していることをあなたは理解できないかもしれませんね。
今、こんな想いを持ってただ息をしているだけの自分の人生に、どうしようもなく心が張り裂けそうになっているので、ついついこんな手紙を書いてしまいました。ごめんなさい。

人生は短い。そして今のこの時間は二度と戻ってこない。
私はもしできるのなら、あなたと一緒に幸せになりたい。
私は今でもあなたを愛しています。
私はあなたが知っているように、生涯あなたを忘れることはありません。
そして決して他の男の人を、あなたと同じように愛することはありません。
もし聞きたいことやシェアしたいことがあるならば、隠すことなくあなたの返事を教えてください。
私はいつでもあなたのためにここにいます。
あなたは私に辿り着く方法を知っているはずです・・。
モナより」

その手紙を読みながら、彼女もまた虚ろな気分で暮らしている姿が想像できた。
彼女が僕のために選んでくれた本・CDなどの品々は、高級品をポンと買って送ってくれるよりも僕の心に響いた。
本をぱらぱらとめくって見ると、所々に貼り付けられた二人のプリクラに苦笑いをした。
送られた4冊の本の1冊は、1日1ページずつ読み進め1年で読み終わるスタイルの本で、そこには人生を豊かにするための教えがたくさん詰まっている素晴らしい内容のものだった。

1日彼女に連絡を取るべきかどうか迷ったが僕はやはりそれらのお礼を言うべく、翌日彼女にコンタクトを取った。

彼女の携帯にメッセージを入れた後、僕は4ヶ月ぶりに彼女の顔をスカイプで見ることになった。
以前背中の中ほどまで伸びていた彼女の髪はばっさりとカットされ、自分のあごに届くかどうかの短さになっていた。
黒々としたストレートのショートヘアーは、彼女の小さい顔に良く似合っていた。
「随分短くしたね」
「おばさんにみたいに見えるでしょ。おんなが髪を切るのは意味あるのよ、知ってる?」
久しぶりの二人が交わした会話は、そんな彼女の髪の話だった。

当然二人の話は、モナが起こしたメール配信事件に及び、僕はそれについては何も怒っていないことを話した。

「たくさん送ってくれてありがとうね。嬉しかったよ。」
「アコはそれちゃんと届くか心配してたよ。良かった届いて。あなたはまだ怒ってますか?」
「怒ってないよ。もうずっと前から怒っていない。自分が悪いのは分かっているから。」
「ほんとに?それじゃあどうして連絡くれないの?」
「・・・色々考えることがあって。」
「何を考えているの?」
「色々だよ・・・送ってくれた本は少し読んで見たよ。どれもいい本だね。あなたは読んだの?」
「それアコの分も買った、あなたと同じ本。今読んでるよ。フェイスクリームは最初少しだけ試してみてね。それでスキンに合わないだったら使わないで。あのクリームはダメージ少ないからいいと思う。アコも使ってるよ。」
「オオ、昨日使ってみたけど、よさそうだね、これ・・・ところで一つ質問があるんだけど・・」
日本語で会話をしていたが、質問があるという言葉だけ英語で話した。
「あなたみんなにメール送ったでしょう、あれは何で?」
「アコはあなたにリアライズしてもらいたかっただけよ」
「わざと送った?tactics(策略・駆け引き)があったというか、そんな意味だけど・・・」
「オオ、半分それあった。でもアコ間違った。アコ馬鹿だったよ。」
「そっか。僕は怒ってないけど、今いろいろ考えてるから、あなたとのコンタクトはまたやめるよ。今日は荷物届いたから連絡しただけ。」
「そうなの?アコ待ってるよ、あなたのこと。待っててもいいでしょ。」
「わからないなぁ。それじゃ約束する、クリスマスまでにそれ返事する。」
「わかった。クリスマスまでね。それ約束よ。」
「わかった、約束する」
「ねぇ、ベルと話する?ベルはなんであなた連絡ないって言っているよ。あなたのこと、ベルも待ってるよ。」
「今日はベルと話しない。どうなるかわからないのに、可愛そうでしょ。」
「そうか・・、わかった」

僕はできるだけ自分の感情を押し殺して彼女と会話をした。
短い会話だったが、僕の胸の中に横たわっていた重しが少し軽くなったような気がしていた。
たったそれだけで、僕の生活は少し平和を取り戻した。
彼女が送ってくれた本がきっかけで、それまで放り投げていた読書を再開し、ベッドの上、コーヒーショップ、電車の中・・時間が許す限り読書に没頭することで、僕は落ち着きを取り戻していった。

特に彼女が送ってくれた1冊”Truth FOR TODAY”には、人間の卑しさ、ずるさ、願望、虚栄、本能、世の中の乱れに関して、自分たちがどのように対処し変わるべきかが書かれていた。

「全ての人間は変わりたいと願っている。世の中にあふれる全ての広告は、人々のそんな変わりたいという欲求を前提に成り立っている。みんな良く見られたい、気分良く過ごしたい、よい考え方をしたい、より良く生きたいという欲求である。
そして生き方を変えていきたいと願っているのだが、不思議なことに変化を恐れる気持ちがそれを妨げている。」

変わりたいのに変わるのが怖いから人は変われない・・人間の心理をついていると思われたこの下りから、僕はこの本に引き込まれていった。
神の力が自分だけの力では解決できない真実の答えを与えてくれるというそれは、キリスト教徒でない自分は読み飛ばした部分もあるが、それでも様々なことを考えるきっかけを与えてくれた良書だった。
時には英文の文章ゆえにそのエッセンスが読み取れずいらいらしたが、辞書を片手に分かるようになるまで読み返してみた。
どうしてもわからないところはそのうちモナに聞いてみようと、よりを戻すと決める前からアンダーラインを引いたりしていた。

落ち着きを取り戻していった僕は、同時に自分の心と正直に向き合うことができるようになっていった。
自分の素直な気持ちに従うのであれば、僕はモナと一緒になりたいと思っている。
あとは彼女を二度と悲しみのどん底に突き落とさないという自信・確信を得ることだけだった。
モナは一見かよわく従順で優しいだけの女に見えるが、その裏には激しく厳しい一面があり、それがどのようにバランスしているのか分からなかった。
もしそれが顕著に表面に出てきた時に、僕がそれに耐えられるだろうかということが一番の心配ごとだった。

しかし最後は、何を言っても何をされても、彼女がどれだけ自分を大切に想ってくれるかが自分にとっては一番重要で、あとは相手をどれだけ信じることができるかできないかが問題だという単純な考えに至った。
僕はモナと約束したクリスマスまで、じっくりとそのような自分の気持ちを見つめ直していた。
時間が経過しても、もし彼女に対する慕情が少しも損なわれることがなければ、彼女ともう一度向き合ってみよう、そしてその時にはきちんと将来の話を彼女としようと思いながら・・・。

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エントリー:リン101 モナの手紙
2009年07月11日

リン100 虚脱状態

怪メールがきっかけで、僕はリンとの関係をはっきりさせ、モナとの関係も清算してしまった。
携帯の電話番号は変更し、二人から電話が繋がらないようにしたが、それは彼女らを嫌ってそうした訳ではない。
彼女達と中途半端な連絡を取り合えば、また以前のような煮え切らない態度を取ってしまいそうな自分に自信がないためにそうしただけだった。
彼女達から僕に連絡を取る手段は、LynLooとのやり取りに使っていたchikkaのアドレスと、海外の友人との連絡用に使っていたyahoo comのアドレスのみとなった。
もちろんそれらのパスワードは変更済みだった。

それ以来、モナは2週間から3週間に一度くらいの頻度で近況報告の簡単なメールをくれたが、僕からは一切返事をしなかった。
リンに対する送金は突然止めるわけには行かなかったので、3ないし4ヶ月でそれを止めることを宣言していた。
送金した後には、リンは受け取り確認と感謝のメールをくれたが、僕は彼女にも返事をしなかった。

また友達付き合いのあったフィリピーナ達とも一切の連絡を絶った。
彼女たちとのコミュニケーションツールは、携帯、携帯メール、Yahoo Japanアドレスだったが、それらは全て変更したので、僕から連絡を取らなければ先方からこちらへの連絡は取れない環境になっていた。

とにかく徹底したかった。
なぜそこまでするのかと聞かれても上手く答えることができないが、自分に染み付いたフィリピンの垢のようなものを一旦きれいに洗い流し、そして垢と同じようにこびりついているしがらみを全てはぎ落としてから再出発したい気分だった。
やはり僕の中では、けだもの呼ばわりされたことが心の奥深くでくすぶっていた。
多くの女性にちやほやされて、少し図に乗っていたかもしれないという反省があった。
友達関係といいながら、そこに何の意味があったのかという自問自答にも答えられずにいた。
僕には落ち着いて自分の気持ちを整理するための時間が必要だった。


僕はリンとLynLooを全くの別人として扱っていた。
そのLynLooとのやり取りは8月の終わり近くに一旦終了した。
LynLooにはモナやリンとの関係を絶ったことを報告し、自分の近況も混ぜながらリンと自分のそれまでの関係や自分の気持ちの変化についてずっと報告していた。

LynLooとの対話が、僕の唯一の救いだった。
LynLooであれば僕は彼女を何もしがらみがない女性として、全て心の赴くままに正直に話すことができた。
仮にそれがリンだとしても・・である。
心の中にくすぶっていたリンへの様々な想いも遠慮なく話した。
その時々に感じていた寂しさ、見えなくなってしまった将来展望、リンやモナに対する罪悪感・・・LynLooと対話をしてる時の心境次第で、それらの話題は神出鬼没に話題に組み込まれた。
LynLooはまるで僕のカウンセラーのように、僕の心を救ってくれた。
これまでリンに言えなかったことを、LynLooが全部聞いてくれた。

そして彼女と2ヶ月をかけた対話が終わる頃には、次月のリンに対する送金が最後になることをLynLooに伝え、どう思うかを聞いた。
LynLooは、あなた次第だとシンプルに答えただけだった。
それは予想通りの答えと答え方だった。

最後にリンという女は幸せだったに違いないという彼女の話を聞いて、僕はありがとうと感謝を述べ、そのやり取りを終わらせた。
LynLooとのやり取りが終わったことで、長い間の続いたリンとの関係が本当に幕を閉じたことを感じた。

LynLooがこの長い話にじっくりと付き合ってくれたこと、そして彼女のその時々の反応、それらはLynLooがリンであることを物語っていたが、最後まで彼女は自分がリンであることを明かさなかった。
彼女がリンではない可能性が数%僕の中で残っていたが、半年後に再開した彼女とのやり取りで、その数%が解消されることになる。
そしてLynLooは完全に姿を消すことになるが、それはまた後日談の中で紹介することになる。


全てが終わってみると、自分には何も残っていないことが妙にこたえた。
お金も家も地位も恋人も全て失い、自分は何をしていたのだろうと思った。
それまで夢中で色々なことをしてきて、どんな目にあっても後ろを振り返りはしなかったのに、初めて後ろを見たら何もかも無くしていた自分に呆然とした。
まるで夢の中を彷徨い続け、今目覚めたような感覚だった。
いっそ夢であればその方がましであったが、しかしそこまで虚ろではなかった。
何かを立て直さなければ自分が壊れていまいそうな焦りがあるのだが、何をどうすれば良いかがわからなかった。
まるで人生の落伍者になってしまったような惨めさも味わった。
そうであればホームレスに身を落として、完全な世捨て人になろうかとも考えた。
何もかも捨てて楽になりたいという気持ちが強かった。
しかし我侭な自分がホームレスを足抜けをしたくなった時に、それが可能だろうかと考えるとさすがにそこまで思い切りよくはできなかった。

決定的に足りないものが何かに気付くまで、時間がかかった。
それは自分がどうしたいのか、どうなりたいのかが見えないということだった。
しかしそれがわかってさえ何も決めることができないまま、僕はとりあえず目の前の仕事に取り組むことしか能が無い人間に成り下がっていた。

目的も生きがいもなく、ただ食うために働くことがこれほどつまらないとは思わなかった。
とりあえず食いぶちさえ稼いでしまえば、それ以上は仕事をする気分にはなれなくなっていた。
リンやモナに出会う前の生活に戻っただけであったのに、心の中には明らかに何かが足りなかった。
考えられないほどの虚脱感であった。

少し前の自分であれば、どこかのフィリピンパブにでも気晴らしに遊びに行くところであったが、その頃はそんな気も全くおきなかった。
もしそこにいるフィリピーナの安っぽい嘘や見栄、心のない営業トークに出会ったとしても、それを笑って受け流すだけの心のゆとりはもはやなかった。
そしてこのような精神状態でフィリピンパブに行き、逆に自分を癒してくれる女性に出会っていたら、きっと僕はまたはまっていたに違いない。


一つだけはっきりと言えたのは、その頃の僕はモナと過ごした横浜の安らぎや幸せ感が切ないほど懐かしかったということだ。
それはその時に始まったことではなく、モナが帰国してから一貫して感じていた彼女に対する慕情だった。
弱りきっていた僕はまだ見ぬフィリピーナよりも、あの横浜で感じたモナの優しさに癒されたかった。
あの横浜で彼女と過ごした時間は、それほど甘く平穏だった。

モナが暴発した時には怒りを覚え失望もしたが、そんなものは時間をかけずに解消していた。
彼女のあの行動は決して褒められたものではないが、その原因は自分にあることを十分過ぎるほど分かっていたからだ。
過去に彼女が自分の愛を僕に気付かせようとしてきた行動が全て積極的だったことを考えると、あのメール配信事件もその一つだと思えば何のことはなかった。

僕がモナに擦り寄って行きさえすれば自分の虚脱感は解消されるだろうが、かつて一時の感情に流された結果、モナには散々な想いをさせている。
彼女に連絡を取りたい自分と、慎重に成らざるを得ない状況がジレンマとなり、それが僕の心をより蝕んでいたのかもしれない。
猛暑に襲われていたころは暑さと闘うことで紛れていたそれらの感情が、9月に入り過ごしやすい気候が出現し出すと、それが重石のように自分に覆いかぶさってきた。
皮肉にも僕に残された逃げ場は、つまらないと感じる仕事しかなかった。
信じられないような虚脱感と闘いながら、僕は半分屍のようになった体を引きずりながら、仕事のために毎日大都会東京へ通っていた。


9月の中旬に、僕の携帯にフィリピンの知らない番号から電話が入った。
僕はどこかのフィリピーナが、日本にいる客か恋人にでも発信した電話だろうと思い、電話にはでずに、chikkaでその番号に、「あなたは番号間違いをしている」と伝えた。
するとその番号の相手から「間違いではない、私はモナです。あなたは私のこの番号を知らないの?私のメールを読んでいないの?」と返事が返ってきた。
新しい番号を知らないはずのモナから電話が入ったことに驚いた僕は「なぜこの番号を知っているのか?」とモナに返事を出した。

モナは自分のMACブックに、ある無料ソフトをダウンロードする際僕のi-tuneストア用のアカウントを使用したらしいが、その時に偶然に僕の新しい携帯番号をアカウント情報から拾ったそうだった。
その文面からは、以前のような情報泥棒をするつもりはなく、それはあくまでも偶然のアクシデントだったことを必死で説明したがっていることが感じられた。
そこには、ごめんなさい、でも怒らないで欲しい、本当に偶然だったという言葉が繰り返され、僕が怒りを爆発させることを恐れている様が読み取れた。

そしてその時モナがその時に使った番号は自分の新しい携帯の番号であり、少し前にメールで僕に連絡をしたはずだとも書いていた。
僕はモナの言葉を少しも疑っていなかったし、彼女が僕の新しい携帯番号に連絡をとってきたことも怒ってはいなかった。
しかし僕は事情がわかった時点で、モナに対する感情を封印するかのように「わかった」と一言だけ返事を出した。

少し気になったのは、彼女が「少し前にその番号を僕に伝えたはず」という点で、僕はそんなメールを受け取った覚えはなかった。
確認のために過去のメールを洗ってみたが、やはりモナからのそんなメールは見当たらなかった。
また誰かが自分のメールにアクセスしているのかという疑惑が頭をもたげたが、モナのメールが発端となった一連の騒動に疲れを覚えていた僕は、もうそんなことにこだわる気力は残っていなかった。
その時にはメールのパスワードを再度変更するだけにとどまった。


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