フィリピーナと共に
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フィリピン生活:カテゴリの記事一覧です。

2010年09月05日

153.二人の弟

モナには二人の弟がいる。すぐ下の弟は度々話題に上がるジン、現在就職活動中。そしてその下の弟がロン。弟二人は、本当に兄弟かと思えるほど、性格がまるで違う。

ジンはおおらかで、他人に嫌悪感など微塵も抱かせない、温和な人当たりの良い好青年である。顔もかなりのハンサムなので女性によくもてる。そのせいで、女性関係のトラブルも多く、家の外に、既に二人の子供がいる。子供の母親は同じ人ではない。

最初の子供の母親を、ジンは今でも忘れていないようだ。付き合っていた当時から、ジンはその女性を真剣に愛していたらしく、子供ができた時にその女性の父親に結婚の許しを貰いに行っている。しかしそこであったやり取りの詳細は知らないが、父親は、自分の娘の相手として定職を持たないジンとのことは断じて許さないという態度を貫き、ジンは彼女の家を追い出されるようにして返ってきたそうだ。
もしかしたらその父親は、ジンのだらしない部分を最初から見抜いていたかもしれない。どんな経緯でそうなったのかは知らないが、それを契機にその女性とも別れることになり、それからジンは彼女に相手にしてもらえない。その子供の出生届にも、父親としてジンの名前は記載されておらず、子供のファミリーネームは母親のものとなっている。これはモナがベルを生んだ時ときと同じで、女性の方から完全に決別されたケースである。

次の子供の母親は、どこかのバーで働いている女性らしい。彼女は性格に問題があるらしく、ジンは彼女を最初から良く思っていない。子供ができた経緯は、酔ってそんな関係になってしまったからだと聞いているが、子供ができてもジンにはまるで結婚の意思がない。しかし相手の女性はジンに相当入れ込んでいるらしく、ジンに強く結婚を迫ったらしいが、ジンは最後まで首を縦に振らなかった。しかし生まれた子供の父親として、ジンは出生届に無理やりサインをさせられている。よって子供のファミリーネームはジンと同じだ。これでジンは自分の意志とは関係なく、その女性とは切っても切れない関係を強制的に持たされたことになる。
モナが言うには、それはジンを自分に繋ぎとめるために、敢えて女性がそうさせたということらしい。
しかもその女性の親友が、ジンがあまりに可哀そうになったので本当のことを言うが、その子供は実はジンではない別の男の子供だと本人からはっきり聞いたと言っている。ジン本人は、それを聞いても嘘だと思っているから、本当はどうなのかわからないが、妊娠そのものが、ジンを繋ぎとめるための罠だった可能性があるということだ。少なくともモナは、そう思っている。

その女性から時折ジンに連絡が入るらしく、ジンが冷たい態度を取ると、死んでやる、あなたの家に行って騒ぎ立てるという意味の言葉を喚き散らし、脅迫でジンを自分のところへ呼び寄せているらしい。ジンは内心その女性から逃げたいが、このように逃げきれない状況に追い込まれている。モナはジンが、彼女に対してなぜ毅然とした態度を取らないのか不満があるようだが、優しく優柔不断なジンには、それができないのだろう。
その女性の悪態ぶりは、モナから聞いただけでもかなりのもので、インターネットの彼女のサイトで、ダディー、ママ、モナの誹謗中傷が公にさらされている。最初は無視していたモナも見逃せない状況になり、ジンを通して抗議をし、最後は自ら彼女に抗議したらしい。

以上のようにジンは、人生とは、決してうまくいかないものであるという見本のような展開で現在に至っているが、働いていないので当然子供の養育費はどちらにも払っていない。
一人目の子供のケースでは、仮に養育費を持っていっても辞退されそうな雰囲気であるが、二人目の子供のケースでは、その女性は我が家を金持ちと思っているらしく、親が出てきて、こちらに金銭の要求があった。もし支払いを拒否するのであれば、ジンを娘のレイプ犯として訴えると騒ぎたてられ、間に弁護士を入れて騒ぎを収めた経緯がある。

フィリピンではレイプ犯で捕まると、かなり罪が重いそうだ。そして先日のバスジャック事件で明らかになったように、犯人として警察に身柄を押さえられると、警官による激しい暴行がある可能性も十分あり、悲惨な目に合うらしい。僕はジンの反省を促す意味で、少し臭い飯を食ってこいと言って留置所に送り込んであげたらどうかと進言したが、ダディーやママはそれが耐えられなかったようで、結局弁護士を雇ったのである。
日本ではこのようなケースでも裁判をすれば、決してレイプではないことが証明されるはずだが、フィリピンでは裁判や警察が信用されていないようだ。
前述したインターネットサイトでの我が家への誹謗中傷は、ジンに言わせると「あいつは気が狂っている」ということになるが、僕は、おそらくそれは金を払わない腹いせではないかと思っている。このように、ジンのことでは結構厄介な問題を抱え込んでいる。


それに対して末っ子のロンは、無口で寡黙な若者である。本当にジンと兄弟なのかと思えるほど、ジンとは対極にある性格に見受けられる。顔はロンにも負けないほどのハンサムボーイだが、女性には極めて消極的で、現在も恋人はいない。うちの社長が、たまたまスカイプでロンと話をした時にも、「ハンサムだねぇ、恋人はいるのか?」などと訊いていた。
ロンはジンのようにどこかへ出かけ、明け方泥酔して返ってくるようなこともなく、生活態度は極めて真面目に見える。

技術屋の彼は普段から勉強好きで、僕の仕事の設計資料なども興味を持って読んでいる。
先日はソフトの本を買ってあげたが、何度も読み返しては、わからないところを質問しにくる。
日頃の生活態度を見ていると、まるでフィリピン人男性らしくない真面目さがあり、おそらくママの几帳面な性格を色濃く受け継いだのではないかと僕は推察している。

彼にデジタル回路の言語設計と開発ツールを教えたところ、飲み込みが早くそれなりの基礎もあるようだったので、先日ある日本の大手有名メーカーに入れようと画策してみた。
先方も丁度人が欲しいということになり、それが現実のものになりかけたので、急いでロンにパスポートを取らせるようにモナに指示を出した。そしてロンには、履歴書・経歴書を作成し、すぐに送るようにお願いをした。彼にとってはまたとないチャンスである。

ロンは少し前まで、フィリピン国内の大手日系企業工場で勤務していたが、かのリーマンショックの影響で、その会社の現在の日本国内や海外工場のうち、数十か所を向こう数年間かけて閉鎖すると発表されていた。その中にロンが働くフィリピン工場も含まれていたが、フィリピン工場は予定よりもかなり早く別会社に売り渡され、経営者が変わったと同時に多くの社員が退職した。ロンもその一人としてジャマイカの家に帰っていたのである。
ロンは再度働く意欲を十分もっており、設計の仕事もできそうなので、少しは良い条件で働けるチャンスはないものかと予てから考えていた。そして先日、またとない千載一遇のチャンスが訪れたのである。

ロンから送られてきた経歴書はあまりにもシンプルすぎて、客観的に彼の技量を十分判断できる内容ではなかった。それを修正するために、経歴書については何度かロンとキャッチボールを繰り返していたが、中々満足する物ができてこない。
そして問題はパスポートだった。先方は仕事のスケジュール上、すぐにでも来てほしいということだったが、モナによると、パスポートが手元に届くまで最低2週間はかかるとのことだった。本来はそれでも遅いのだが、それを先方に話し、おおまかなスケジュールを見直し、VISAの手続きについても調べがついて、ほぼそれで話が進もうとしていた。
しかしその夜突然、パスポートの入手日程が曖昧だとモナが言い出した。

モナは何やら難しい説明を一生懸命するのだが、こちらは事情がさっぱり飲み込めない。僕は何度も「パスポートを入手できるのは、いつか?はっきりして欲しいのは、その日程だけで、手続きの内容や複雑なフィリピンの事情はいらない」と言うのだが、モナは日程を明確にせず、手続きが大変だという話しを一生懸命している。それに対して僕は、日程はいつか、それだけを教えてくれと言い、結局早くても一カ月はかかることが判明し、通常は二カ月かかるという話も出始めた。袖の下を使えばどうかと訊いたが、それはまだ確認していないと、その辺りに精通している知り合いに、その場で電話をする始末である。

結局最近システムが変わったとのことで、電話をかけた知り合いも、すぐに入手するのは難しそうだが、つてが無いわけでもないのでいろいろと当たってみて、その結果を翌朝までに連絡してくれることになった。もしパスポート入手まで二か月もかかるとしたら、全く話しにならない。ついでにロンの経歴書も不十分なので、箇条書きで欲しい内容を具体的に本人にお願いし、それを翌朝にメールで送ってもらうようにロンと約束した。

僕からは、翌日の午前中までに先方と一緒に全ての判断をするので、それに間に合わなければ今回は取りやめる結論を出す旨を明確にモナに伝えた。日程さえも明確にならないのであれば、相手に迷惑をかけることになる。
しかし翌日、午後になってもパスポート入手日程の連絡が入らず、そしてロンと約束したものが僕の手元に届いたのは午後4時頃である。
先方には朝電話で、パスポートの入手予定が曖昧になっている連絡を入れ、分かり次第連絡をすることにし、経歴書は後ほど送ると言ったのだが、ロンのメールが遅いために仕方なく不十分な内容でそれを送付した。
モナに電話を入れると、パスポートを早く入手できる方法と、それにかかるお金がいくらになりそうか、まだ連絡待ちだということだった。

結局この話は、このような始末で日程を明確にできないまま、流れてしまったのである。せめて状況を連絡してくれれば先方との話しようもあったのだが、まるでわからないということであれば、どうしようもない。

僕はその夜、この件でモナに対して怒りを顕わにした。
ロンにとっては大きなチャンスであり、しかも日程が重要だという話をくどいほどしていたのに、なぜ真剣に動かないのかに対してである。
モナは一生懸命動いたと言ったが、マニラの知り合いに連絡を入れたのも、僕に言われてからである。色々調べたと言うが、肝心なところはわからないという話になる。関係する事務所に電話で確認をしたかと訊くと、そのようなことは一切していない。僕はロンのVISAの関係では、いろいろと電話番号を調べ、直接電話で確認をしている。真剣に考えれば、そのくらいは普通にするものだと思っている。
ジャマイカの家のインターネットやケーブルTVが、すぐに繋がるという話をしながらいつまでも繋がらない現状を、調べもせずにただ待っているのも同じで、それも先日僕がモナのケツを叩いて調べさせた。本気になれば、詳しい人に電話をすることくらいはするものである。そしてロンが書類に必要な情報を送ってきたのは、約束から大幅に遅れた夕方近くだ。なぜ約束を守れないのか。

ついつい僕は「フィリピン人はなぜそんなにいい加減なんだ!」と言ってしまった。本当にそう思ったのではあるが、口から言葉が出た直後に、言い方を間違えたと思った。
ビジネスの世界では、スケジュールを含む約束事は重要だという話もした。
モナは強く怒っている僕に、涙を流し始め、「私はダメな人間だなぁ、ごめんなさい」と言い出した。これらの出来事から、どうも彼らには、ビジネス上の緊迫したやり取りが実感できないようだと痛感した。
これまでも僕がフィリピンの家で仕事をしている時に、平日にも関わらずレガスピに買い物に行くけれど一緒に行けないかなどと、モナは平気で言ってくることが何度もあった。僕はその度に、「平日は仕事をする日なんだよ」と言って聞かせ、モナや彼女の家族が、最近そんな基本的なことをようやく理解するようになったばかりである。

モナを始めとするフィリピン人には、日本のビジネスにおける緊迫した空気が、どうしても実感できないようである。
それは無理もない話だと理解しているが、安易にあんな話を進めようとした自分が愚かにさえ思えてきて、ロンの話しが流れたことについては、結局正解だったかもしれないなどと今になって思っている。
それでもロンが真面目に仕事に取り組むだろうことは変わりなく信じているが、それだけに下手をすれば、重圧で彼を潰してしまうことにもなりかねない。慣れ親しんだ環境に、天国と地獄ほどの違いがあることを、痛切に感じた出来事であった。

ロンは今回の経歴書のやり取りで、自分の経験値が不足していることを自ら悟ったようだ。モナの話では、彼は前にも増して勉強に励んでいるらしいが、それが今回の収穫でもあった。しかしロンに足りないのは、実践の場での経験である。
彼は日本にいる若者に劣らない素質を持っている。インターネットや本で勉強したことを、道具や材料が無い中で、自ら実際に実験で検証するということができる。その結果が素晴らしいということを言っているのではない。会社のような組織に属しているわけでもなく、何も重圧が無い中でそのような勉強をこつこつとできる人間は、日本でも中々見当たらない。毎日ぼんやりと過ごしていても、誰にも叱られることがない環境でそれはできるということは、大いに認めるところである。だからこそ、実践経験を積ませてやりたかったというのが、僕の本音である。


ジャマイカの家の中には、このような二人の若者がくすぶっている。おそらくこのような状況は、我が家だけではなく、フィリピンの世間では珍しくないことだと思われる。本来生み出される膨大な付加価値が、様々な環境を背景に無駄になっている。
実は日本でも、就職のために留年をするという贅沢な若者が、30万人はいるという話である。新卒の方が就職には有利なので、あえて留年を選択するそうだ。

学校を出た後は、普通に就職ができる社会を整備していかないと、国として明るい未来は期待できない。その意味では、日本は足元が揺らいでいる状況になりつつあるが、フィリピンの状況はもっと暗い。フィリピン政府が積極的に環境を作ることは物理的には可能だろうが、それでも国民の意識が低いからである。この意識を変えていくのは、並大抵ではないと実感するところである。
フィリピンの女性は働き者が多いから、女性ワーカーが中心の製造工場は根付いているが、開発・技術系となると、女性だけでは賄いきれない現状がある。当然のことながら、半分は男性なのだから、彼らに発奮してもらわなければ国の発展はあり得ない。フィリピンは、日本と違い子供だけはたくさんいるから、軌道に乗ればこれから伸びていくはずだ。
しかし環境が整っている日本は少子化が深刻な問題になっており、環境整備や意識改革に幾多の困難を残しているフィリピンに有り余る子供がいるこの現状は、皮肉と言えなくもない。

外から見れば冷静に他人事で色々と言えるのだが、その社会にどっぷりと組み込まれた人間と一緒に暮らし、彼らの人生に入り込んでしまうと、目前の具体的な問題として自分にも関わってくるのだから、悩みも大きく環境の問題も含め恨めしさも募る。
当然人情としては、目の前にいる二人の弟に何とかなって欲しいと強く願うところだ。

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カテゴリー:フィリピン生活
エントリー:153.二人の弟
2010年09月01日

152.僕の提案

今日のスカイプで、ユリが一人で4歩も歩いたとモナが興奮して教えてくれた。モナはわざわざユリを僕の見ている前で歩かせようとしているが、子供は気まぐれ。歩く気分でないときには歩こうとしない。しかしモナがユリの片手をつないでやると、ユリはトコトコと部屋中を歩き回る。少し前までは、両手を持ってぶら下げるような姿勢をとらないと歩けなかったから、ほんの少しの間で随分と変わった。この分だと勝手に一人で歩き回るのに、あと一カ月も要さないのではないだろうか。

僕が日本へ来てから、ユリの成長以外にはダディーの様子に変化が見られるそうだ。最近は毎日、昼と夜に食べ物(魚)を自分で買って持ってくるらしい。

僕が日本に戻る前日、モナと二人で、ママやダディー・ジンの話をした。
ママは最近、みんなが怠け者になっていることを気にしているらしい。それはモナが近くにいて、日々の食べる心配が無くなり、そして家のことでかかるお金は全てモナが出してくれるから、みんながすっかりそれに甘えているせいだとママはみている。ママはモナやベル・ユリがいつも傍にいて、一緒に暮らせることを本当に幸せに思っているのだが、周囲の人間が楽をすることを覚えてだめになっていく様子に、心を痛めている。
だから、もしモナが僕と一緒に日本に行きたいなら、家のことは心配せずに一緒に行きなさい、二人が結婚した時から、その覚悟はできているし、結婚をしたならそれが自然で当然だという話を少し前にモナに話したそうだ。もしモナが家からいなくなれば、きっとみんなが自分たちの生活を真剣に考えるようになるし、ママ自身も働いて生活費を稼ぐことは問題ないと言っている。
やはりフィリピンでは、女性が男性よりもはるかにしっかりしている。普段楽をして生活できていても、きちんと家族のことを見て、考えているのだ。

おそらくママは本当にがんばるだろうと思う。しかし、ママががんばってダディーやジンが楽をするのであれば、それは今と何も変わらない。自分が頑張らなくても何とかなることがわかれば、きっと彼らは変わらないという予感があるのである。

そこで僕は一つの提案をモナにした。
今家でかかっている食費は一日500ペソ(1000円)。食べる人は大体10人だから、一人頭一日50ペソである。
ダディーはママ、ジン、ロンに対して責任があるから、本来ダディーは食べ物代として、自分の分も含めて一日4人分の200ペソを稼がなければならない。僕はモナ、ベル、ユリ、ジュンさん、テスおばさんの自分を含めて6人分の責任がある(テスおばさん、ジュンさんはモナが雇っている)から、一日300ペソである。それに31日をかけて、ダディーは6200ペソ、モナは9300ペソを、ママに食費として預ける。食費の管理担当はママにする。ママはお金にとても厳しい人で、たとえダディーの要求でも、決してわけのわからないお金は渡さない。かえってモナの方が気前いいので、ダディーは何かあるといつもモナにお願いをしてくる。

こうしてママの手元には、一カ月の食費として15500ペソが入る。おそらくそれだけでは足りなくなるので、不足分はモナがママと相談をして出してあげるが、表向きのルールは、ダディーの生活費負担分として、6200ペソを義務付けるのである。もしダディーが一日200ペソは厳しいということであれば、ダディーはジンのケツを叩いて、働かせれば良い。そうしたらダディーの負担は減る。
現在ダディーは、親として息子をきちんと指導しようとしない。それは息子が遊んでいても、自分は苦労せずに済むという理由もあるからである。しかしこのようなシステムにすれば、僕やモナは、ジンが遊んでいようが、ダディーが食費を稼いでくれるなら文句はないというスタンスを貫くことができる。ジンの親でもない自分たちがジンにとやかく言うのは、本来は筋違いというものだ。
電気・ガス・水道等の光熱費も、人数割りで分担してしまう。これも過去3カ月間の平均により定額を決め、光熱費関係の管理をモナがしながら、不足分はモナが支払う。これまでは全額支払っていたのだから、少しくらい不足分が出ても問題はない。要は各自の責任を明確にするのが目的であるから、こちらの負担が不公平だなどと言うつもりは毛頭ないのである。
僕はこの仕組みをみんなに明確にして実際に導入すると言えば、みんなの気持ちの緩みにくさびを打ち込むことができるのではないかと思っている。

モナは最初、このシステム導入に抵抗を示した。真っ向から反対ではないが、それはなんか家族ではないみたいということらしい。
しかしそれであれば、家族とは何かということを考える必要がある。がんばる人がいて、がんばっている結果その人は様々なものに支払い能力ができて、だからみんなをただで食べさせ、食べさせてもらう人はのほほんとそれに甘えて暮らす。それが家族の有り方だろうかということである。そして元々ダディーの守るべき家族は誰か・・である。ほじくり出すと、様々な点で矛盾が噴き出す。

何が何でもこのようなシステムを導入するということではなく、とりあえずの案としてママと相談してみてくれとモナに言った。絵に描いた餅でも良いのである。
モナはすぐに、ママに相談をしたらしい。相談した時の様子は詳しく聞いていないが、おそらくママはダディーにその話しをしたのだと思われる。本当に話したのかどうかは、モナも知らないが、ダディーの態度が変わったから、たぶん話したのだろうということだった。
少し話をしただけで、ダディーが毎日魚を買ってくるようになったとすれば、効果はあったということである。

僕の目的は、各自が無制限にだらけることなく、そこそこの責任感を持って努力をして欲しいだけなので、ダディーは、日々食べる魚を買う義務があること自覚し、そのために働くということでも問題はない。
長い年月、責任感も努力することも忘れて楽をしていたら、いざ頑張らねばならない時が不意に訪れてもどうにもならないことが、僕には怖い。そして彼らのモナに頼る姿勢がエスカレートするということも、僕が恐れていることである。

ジンは仕事を探しているらしい。ジンに対して、モナは相当厳しいことを話している。この一カ月間に仕事に就かなければ、今度は本当にこの家を出ていってもらうと伝えているそうだ。本来彼のけつをひっぱたくのにはかなり遅い時期(手遅れ)なのだが、ジンには焦りながら発奮してもらわなければならない。まだまだ若いのだから、将来自立できるようにならなければならない。
彼は安月給で辛い仕事はしたくないと思っているらしい。高給な仕事にありつけたらそれにこしたことはないが、そんな仕事がないから就職できないなどという言い訳を、もしジンがしたとしたら、それは彼が大きな勘違いをしている証拠である。
世の中はそんなに甘くないと良く言うが、実はフィリピンの世間は驚くほど甘い。しかし我が家は甘くないのである。そこは日本スタイルである。ジンにはそれを、よく理解してもらうほかないし、時には荒療治も必要である。もしジンの将来が本当に心配であったら、ダディーやママにも、心を鬼にしてもらう必要がある。

このような提案が本当に家族の関係をだめにするか、そうではないか、それはやや実験的ではあるが、何かしらの歯止めを考えておかないと、最後は本当に家族が分裂してしまう。それはモナと僕の分裂ではなく、モナとモナの家族の分裂である。
もし本当にみんなが怠け者になったら、モナは家を出るといい、ママはそうしなさいというはずだ。
モナは、自分が日本で働くようになってから、少しずつみんなの様子が変わっていると、冷静に分析している。最初はみんながハッピーで結構なことだと思っていたようだが、最近それが、良くないことだったのではと振り返っている。タバコシティーを含めたこの界隈では、今の家があるジャマイカに住むことがステイタスの一つらしいが、モナはそこに住むことで、みんながお金持ちになったと勘違いしているのではないかとも言う。

しかし僕は、今の状態を続けることが、みんなにとって幸せだと信じている。できるだけみんながそれなりの努力をし、それぞれの責任を担いながら生活することで、この状態を続けたいと思っている。
僕はそこまで詳しくモナに話していないから、この真意が彼女に伝わっているかどうか。

モナは、自分の家族に対する責任は、本来僕には関係の無いことなのに、ごめんなさい、そしてありがとうと言ってくれる。しかし僕は、何の違和感もなく家族の一員として、ジャマイカの家で暮らしている。僕が食費や家の光熱費、その他のことでお金を出すことは、無理をしたり我慢してやっていることではない。自然な形でそれをしているので、ごめんなさいと言われると、逆に面食らってしまう。

僕にそうさせているのは、当然モナの存在が大きい。僕は彼女と結婚をしてから、彼女の正直さ、誠実さ、優しさ、そして愛の深さを、驚きを覚えるほど実感している。
そんな彼女に、僕は密かに愛と感謝の気持ちを強く抱いているのだが、日本男児たる僕は決してそれを口にしない。だから彼女はきっと、僕のそんな心中を気付いていないだろう。

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カテゴリー:フィリピン生活
エントリー:152.僕の提案
2010年08月30日

151.フィリピンで足りないもの

前回フィリピンを訪れた日の現地日本語新聞で、5月の選挙で当選したアキノ大統領が、これから国政に精を出すぞと予算を調べたら、ほぼむこう1年間の国家予算がほとんど残っていないことが判明したという記事が載っていた。前政権のメンバーが、不正に国家予算を私物化しどこかへ持っていったようなことが書かれており、現大統領がその不正を徹底追及するとなっている。
その後、消えた国家予算の約8割は調べがつきそうだと報道されていた。調べがつくが、肝心のお金が戻ってくるのかどうか、僕は詳細を知らない。
その消えた金額がいくらだったか明確に覚えていなかったので、何気にインターネットで検索してみたが、残念ながら真相にたどり着けなかった。

ちなみにフィリピンの通常の国家予算は、1年間でおよそ250億ドル〜300億ドル・・つまりざっと2.5〜3兆円というところで、とても小さい。国の広さや国民数は日本と大差ないのに、日本の国家予算は80兆円や90兆円という世界であるから、こうして比べてみるとフィリピンの国家予算がどれほど小さいかが分かる。

僕の曖昧な記憶では、残っていたのがわずか5000億円か5000億ペソ程度だったから、誰がどうやってかっぱらったのかは知らないが、膨大なお金が消えたことになる。やはりフィリピンという国は、凄まじいことが平気で起こる。


結局インターネットで、はっきりとした金額にはたどり着けなかったが、その調査の過程で、面白いことを発見したので少し取り上げてみる。

「フィリピン」「不足」のキーワードでインターネット検索をすると、いろいろと出てくるのだ。
電力不足、教室不足、教科書不足、教師不足、米不足、トウモロコシ不足、食糧不足、医師不足、看護師不足、飛行機操縦士不足、コイン不足、水不足、カリウム不足(?)、国家予算不足(不足であれができない、これも買えないという記事がたくさん出てくる)・・・。
とにかく「不足」のオンパレードである。
少し古い話では、警官の拳銃が予算不足で購入できずに大問題になったという話もあった。
嫁不足というのがあったので、少し覗いてみると、日本の農村地帯に嫁に来る人がいないので、フィリピン女性で解決!という話だった。介護師不足も、やはり日本の需要に対して日本人介護師が不足するという話である。
中には、フィリピン空軍には、戦闘機が一機も無いなどという話も出てくる。確かにフィリピンで戦闘機が飛んでいるのを見たことがない。もし飛んでいたとしたら、それはアメリカ空軍戦闘機なのだろう。国家予算が数兆円であれば、高級戦闘機を数機購入しただけで国家予算が半分消えるから買えないというのも頷けるが、結構広いフィリピンの領空は、全く無防備だということを初めて知る。

ちなみに「日本」「不足」で調べると、人材不足、品不足(携帯)、日銀ドル不足、日本人はミネラル不足、日本人はカルシウム不足、睡眠不足、医師不足と、フィリピンのそれと少し毛色が違うことがわかる。共通しているのは医師不足だけ。睡眠不足はなるほどと少し笑えるが、全体的にフィリピンほど切羽詰まった感じではない。

モナにスカイプで、「フィリピンで足りないものは何?」と訊いてみた。
最初に出てきたものは「自動販売機」。次は「デセプリン(教育・躾)」。次は「電車の自動切符販売機」、もしマシンだったら、政府がサラリーを払う必要はないから、フィリピンにはそれが必要だそうだ。僕はそれを聞いた時に、自動切符販売機よりも、田舎には電車がないではないかと思ったのだが、本人は気付いていない。次は「田舎のタクシー」。田舎の移動手段は歩くしかないということだから、公共のバスも含めての話だろう。次は「街の綺麗さ」。人がたくさんいる場所が汚いとのことだった。次は「インターネットのスピード」。次は「家」。子供や人が多く、家(アパートを含めた建物)が足りないから、道路に住んでいる人がたくさんいるとのこと。次は「仕事」。次は「ポリスの武器」。ようやくここで、先ほどとの共通項がでてきた。次は「テクノロジー」。フィリピンはこれが遅れているとの認識である。

フィリピン人の認識はインターネットで調べたものとは少し違うようだが、生活に密着している内容が多く、なるほどと思ってしまう。
僕は、モナがいつ「あなた(いつも日本にいる僕)」と答えるのかと少しドキドキしていたのだが、結局それは最後までなかった(笑)。

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